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【2026年版】複合機のスキャンtoメールが送れない?|Microsoft 365のSMTP AUTH廃止・2026年12月の期限と移行先4つ

複合機とメール認証

会社の複合機でスキャンした書類を、そのまま自分や取引先にメールで送る。中小企業ではあたりまえの使い方ですが、この「スキャンtoメール」が2026年12月末を境に止まる可能性があります。

原因は複合機の故障ではありません。Microsoft 365(Exchange Online)が、機械からメールを送るときの認証方式を切り替えるためです。
しかもGoogle Workspaceを使っている会社では、この切り替えは2025年5月1日にすでに終わっています。

この記事は、中小企業の経営者・情シス担当・総務担当の方が「自社は影響を受けるのか」「何をいつまでにやればいいのか」を30分で判断できるように、Microsoft・Google・複合機メーカーの公式情報だけを根拠にまとめたものです。

先に結論(3行)
① 期限は2026年12月末。この時点で「既定オフ」になるだけで、管理者が必要なら有効化できます。ただし最終的な廃止日は2027年後半に発表される予定です。
② すでに送れなくなっている会社もあります。多要素認証を有効にしている会社、2020年以降に契約した会社、Google Workspaceの会社は、期限を待たずに影響が出ます。
③ 打ち手は4つ(ファームウェア更新/SMTPリレー/メールをやめてクラウド保存/機器の入れ替え)。費用ゼロで済む会社が多いので、まず自社がどれに当たるかを確認するのが先です。
今日30分でできる確認(3つだけ)
1. 複合機の設定画面を開き、メール送信の「SMTPサーバー」欄に smtp.office365.com または smtp.gmail.com と入っていないかを見る
2. 入っていたら、その横の「認証」欄にユーザー名とパスワードが設定されているかを見る(設定されていれば影響を受けます)
3. 複合機の型番をメモして、メーカーの告知ページで自機が対応ファームウェアの対象かを確認する

この3つが分かれば、あとは打ち手を選ぶだけです。逆にこの3つを飛ばして業者に相談すると、必要のない機器の入れ替えを提案されても判断できません。

目次

スキャンtoメールとは?いま何が起きようとしている?

スキャンtoメールとは、複合機が自分でメールを送る仕組み

スキャンtoメールとは、複合機で読み取った紙をPDFなどのファイルにして、複合機自身がメールで送信する機能です。パソコンを経由しません。
複合機がメールソフトの代わりになって、会社のメールサーバーに「このファイルを送ってください」と依頼しています。

このとき複合機は、あらかじめ設定されたメールアドレスとパスワードを使って、メールサーバーにログインしています。
この「アドレスとパスワードでログインする方式」を基本認証(ベーシック認証)と呼びます。

変わるのは複合機ではなく「メールの認証方式」

今回の変更は、複合機の性能や寿命の話ではありません。Microsoftが、この基本認証を段階的にやめて、より安全なOAuth(オーオース)という方式に統一しようとしているのが原因です。

OAuthとは、パスワードそのものを機械に持たせず、期限付きの「通行証(トークン)」を発行して通信する方式です。
パスワードが機械の中に保存されないので、複合機を廃棄したり中古で売られたりしても、そこからパスワードが漏れる心配がありません。

Microsoftは公式ドキュメントで、基本認証をやめる理由を次のように説明しています。

基本認証を使用すると、攻撃者はユーザーの資格情報を簡単に取得でき(特に、資格情報が TLS で保護されていない場合)、
盗んだ資格情報が他のエンドポイントやサービスに対して再利用されるリスクが高まります。
(Microsoft Learn「Exchange Online での基本認証の廃止」より引用)

止まるのはスキャンだけではない

複合機のうち、メールを使う機能はスキャン以外にもあります。リコーは公式告知で、基本認証が廃止されたあとにメール送信ができなくなる機能を次のように挙げています。
自社に当てはまるものがないか確認してください。

影響を受ける機能 何が起きるか 気づくタイミング
スキャナー(メール送信) スキャンしたPDFがメールで届かない すぐ気づく
インターネットファクス(送信) FAXが送れない すぐ気づく
ファクスのメール転送 受信FAXがメールに転送されない 取引先から催促されて気づく
要求時メール通知 機器の状態をメールで確認できない ほぼ気づかない
自動メール通知 紙詰まり・トナー切れなどのエラー通知が管理者に届かない 誰も気づかない
Mail to Print のエラーメール 印刷失敗の通知が届かない ほぼ気づかない
いちばん怖いのは下の3行
スキャンが止まれば社員がすぐ騒ぐので対応できます。しかし「自動メール通知」が止まっても誰も困りません。
その結果、トナー切れや紙詰まりの通知が保守担当に届かないまま何か月も過ぎ、気づいたときには複合機の状態が分からなくなっている、というご相談が実際にあります。
対応表を作るときは、スキャンだけでなく「誰も苦情を言わない機能」まで書き出すことをおすすめします。

Microsoft 365 のSMTP AUTHはいつ止まる?公式のタイムライン

複合機がメールを送るときに使うこの仕組みは、正式にはSMTP AUTH(エスエムティーピー・オース/認証済みクライアントのSMTP送信)と呼ばれます。
SMTP AUTHとは、メールを送信するときにアドレスとパスワードで本人確認を行う仕組みのことです。

Microsoftは2026年1月27日付で、このSMTP AUTHの基本認証を廃止するスケジュールを更新しました。現時点の公式タイムラインは次のとおりです。

時期 何が起きるか 会社側の影響
現在〜2026年12月 SMTP AUTHの基本認証の動作は変わらない いまは使える
2026年12月末 既存テナントで基本認証が既定でオフになる。管理者は必要なら有効化できる 何もしないと止まる
2026年12月以降に作った新規テナント 基本認証は既定で利用できない。OAuthがサポートされる認証方式になる 新規契約では最初から使えない
2027年後半 最終的な廃止日をMicrosoftが発表する予定 有効化での延命にも期限が来る

この延期は、Microsoft自身が「多くのお客様が従来のメールの仕組みを移行するのに現実的な難しさを抱えており、安全な代替手段を採用するための十分な時間が必要である」と認めた結果として案内されたものです。

「廃止」ではなく「既定でオフ」だという点が重要

ネット上の記事には「2026年12月末に廃止」と書かれているものが多いのですが、正確には少し違います。
2026年12月末に起きるのは、既存の会社(テナント)で設定が既定でオフに切り替わることです。管理者が必要と判断すれば、そのあとも有効化して使い続けられます。

つまり「12月末に必ず全社で止まる」わけではありません。とはいえ、次の3点があるので安心はできません。

安心できない理由 具体的にどういうことか
最終廃止日が来る 2027年後半に最終的な廃止日が発表される予定です。延命はできても、いつまでも先延ばしはできません
有効化には条件がある 後述のとおり、多要素認証の設定と両立しないため、セキュリティを下げないと有効化できない場合があります
有効化しても別の壁がある TLS(通信の暗号化)の仕様変更で、基本認証とは別の理由で送れなくなる機種があります

Exchange Team Blog「SMTP AUTH 基本認証 廃止タイムライン(公式)」 ➡

すでに送れなくなっている会社もある|期限より先に起きる4つのパターン

「期限は2026年12月末だから、まだ余裕がある」と考えるのは危険です。実際のご相談では、期限を待たずにスキャンtoメールが止まっているケースのほうが多いです。理由は次の4つです。

止まる前と後の対策

① 多要素認証(セキュリティの既定値群)を有効にしていると、すでに無効

Microsoft 365には「セキュリティの既定値群」という、多要素認証をまとめて有効化する設定があります。
近年契約した会社では既定で有効になっていることが多く、情シスが推奨に従って有効にしている会社も増えています。

この設定を有効にすると、Microsoftの公式ドキュメントにこう書かれています。

organization で セキュリティの既定値が有効になっている場合、Exchange Online の SMTP AUTH は既に無効になっています。
SMTP AUTH を使用するには、セキュリティの既定値を無効にする必要があります。
(Microsoft Learn「Exchange Online で認証済みクライアントの SMTP 送信(SMTP AUTH)を有効または無効にする」より引用)

ここが今回いちばん厄介なところ
「セキュリティを強くするために多要素認証を入れたら、複合機のスキャンが送れなくなった」という相談は非常に多いです。
そして解決策として「セキュリティの既定値群を無効にする」と案内されてしまうことがあります。これは会社全体の多要素認証を外すことになるので、順番が逆です。
正しい順番は、多要素認証はそのまま維持し、複合機の側を後述のSMTPリレーやクラウド保存に切り替えることです。

② 2020年1月以降に契約した会社は、SMTP AUTHが最初からオフ

Microsoftの公式ドキュメントには「SMTP 認証は、2020 年 1 月以降に作成された組織では無効になっていますが、メールボックスごとに有効にできます」と明記されています。

つまり2020年以降にMicrosoft 365を契約した会社では、そもそも複合機からのメール送信が最初から使えない状態です。
「新しく複合機を入れたのにスキャンtoメールだけ動かない」という現象の正体は、たいていこれです。

③ Google Workspace は2025年5月1日に終了済み

Google Workspaceを使っている会社は、この切り替えがすでに終わっています。Googleの公式ヘルプにはこう書かれています。

2025 年 5 月 1 日より、ユーザー名とパスワードを使用して Google アカウントにログインすることを求める安全性の低いアプリ、
サードパーティ製アプリ、デバイスは、Google Workspace アカウントでサポートされなくなりました。
このようなアプリやデバイスからお使いのアカウントにアクセスするには、OAuth を使用する必要があります。
(Google Workspace 管理者ヘルプ「プリンタ、スキャナ、アプリからのメール送信」より引用)

Google Workspaceの会社は「これから起きる問題」ではなく「もう起きている問題」として扱ってください。
逆にいえば、すでに動いているなら別の方式(後述のSMTPリレーやアプリパスワード)に切り替わっているということです。

④ TLSの仕様変更で、OAuth対応済みの機種でも止まる

これは実務でいちばん見落とされる論点です。
Microsoftは基本認証の廃止とは別に、TLS(通信を暗号化する仕組み)でサポートする暗号スイートの種類を変更し、暗号化規格を強化することを発表しました。
認証の話とは別枠で進んでいる変更なので、基本認証の記事を読んだだけでは気づけません。

リコーはこの影響について、公式告知で次のように案内しています。

これに伴い、一部のリコー製品において、OAuth2.0認証対応が完了している機種も含めて
Exchange Onlineでのメール送受信が利用できなくなります。
(リコー公式告知より引用)

富士フイルムビジネスイノベーションも同様に、対応区分の一部の商品については「Microsoft365で使用するTLS暗号スイートの範囲変更」の影響を受けるため、2025年10月20日までの対応を案内していました。

ファームウェアを当てたから安心、ではありません
「OAuth対応のファームウェアを当てたので大丈夫」と思っていたら、TLSの側で引っかかって送れなくなる機種があります。
確認するときは、メーカーの告知ページで「OAuth2.0対応」と「TLS暗号スイート変更への対応」の2つを別々に見てください。
この2つを混同していると、対応したつもりで止まります。

自社が影響を受けるかを30分で確認する3ステップ

STEP やること 見る場所 所要
STEP1 複合機のメール送信設定を見る 複合機の操作パネル、またはブラウザから機器の管理画面 10分
STEP2 Microsoft 365側でSMTP AUTHの状態を見る Microsoft 365 管理センター 10分
STEP3 自機がメーカーの対応対象かを見る メーカーの公式告知ページ 10分

STEP1:複合機側で見る3項目

複合機の設定画面で、メール送信(SMTP)の設定を開きます。メーカーによって呼び方が違いますが、「メール/ネットワーク設定」「SMTP設定」「送信設定」あたりにあります。

確認項目 この値なら影響を受ける 補足
SMTPサーバー名 smtp.office365.com / smtp.gmail.com IPアドレスが直接入っている場合も要確認
ポート番号 587(または25) 465が入っている場合は別の問題があります(後述)
認証方式 SMTP認証(ユーザー名とパスワードあり) 「認証なし」なら別方式なので影響は小さい

SMTPサーバー名が社内のメールサーバーや、複合機販売店が用意したサーバーになっている場合は、Microsoft 365の変更とは直接関係しません。まずここで自社が対象かどうかが分かれます。

なお、いま自社がどの方式で送っているのかは、接続先のサーバー名とコネクタの有無で見分けられます。Microsoftのトラブルシューティング文書に整理されている判定基準がそのまま使えます。

接続先サーバー名 コネクタ 現在の方式 社外に送れるか
smtp.office365.com — クライアントSMTP送信 送れる
末尾が mail.protection.outlook.com 設定していない 直接送信 送れない
末尾が mail.protection.outlook.com 設定している SMTPリレー 送れる
パスワード欄が空なら、それはSMTP AUTHではありません
複合機の設定にユーザー名だけあってパスワードが入っていない場合、その機器はログインせずに送信している=直接送信かSMTPリレーになっています。
この場合、今回の基本認証の廃止では止まりません。ただし直接送信だと社外に送れないので、「社内には届くのに取引先に届かない」という別の症状が出ているはずです。

STEP1の近道:Exchange管理センターの「SMTP AUTHクライアントレポート」

じつは、どのアカウントが実際にSMTP AUTHでメールを送っているかは、Exchange管理センターのレポート機能で一覧できます。推測で機器を数える必要がありません。
場所は新しいExchange管理センターの[レポート]→[メール フロー]→[SMTP AUTH クライアント]です。

このレポートには次の項目が表示されます。中小企業の棚卸しでは、これがいちばん早くて確実です。

表示項目 何が分かるか
送信者のアドレス どのアカウントが機器から送信に使われているか
ドメイン どのドメインから送っているか
認証プロトコル TlsAuthLogin=基本認証/XOAUTH2=先進認証(OAuth)。ここが TlsAuthLogin の行が、今回止まる対象です
TLS 1.0/1.1/1.2 の割合 TLS 1.0や1.1で送っている機器が分かる。TLSの側でも止まる機器の特定に使えます
送信されたメッセージ数 実際に使われているか、使われていない設定が残っているだけかの判別
このレポートを見るときの注意
既定では過去7日間のデータしか表示されません。レポートが空だった場合は、まず日付範囲を広げてください(最大90日まで指定できます)。
月末だけ使う機器や、たまにしか使わないFAX転送は7日間だと出てこないので、90日で見るのが確実です。
認証プロトコルの列が TlsAuthLogin と XOAUTH2 の混在になっている場合、一部の機器だけ対応が終わっている状態です。この2つを分けて数えると、残作業がそのまま見えます。

Microsoft Learn「Exchange 管理センターの SMTP AUTH クライアント レポート(公式)」 ➡

STEP2:Microsoft 365管理センターで「認証済みSMTP」を見る

Microsoft 365側は、メールボックス単位で確認できます。手順は次のとおりです。

順番 操作
1 Microsoft 365 管理センターを開き、[ユーザー]→[アクティブ ユーザー]に進む
2 複合機が使っているアカウント(メールボックス)を選ぶ
3 表示されるポップアップで[メール]を選ぶ
4 [Email apps]セクションの[メール アプリの管理]を選ぶ
5 [認証済み SMTP]がオンかオフかを見る(オン=有効、オフ=無効)

PowerShellが使える環境なら、次のコマンドでも確認できます。
SmtpClientAuthenticationDisabled の値が False なら有効、True なら無効、空白なら組織全体の設定に従っている状態です。

Get-CASMailbox -Identity <メールボックス> | Format-List SmtpClientAuthenticationDisabled
Get-TransportConfig | Format-List SmtpClientAuthenticationDisabled

なお組織全体の設定は、Exchange 管理センターの[設定]→[メール フロー 設定]にある「organization の SMTP AUTH プロトコルをオフにする」で切り替えます。

Microsoftの推奨はこうです
公式ドキュメントには「Exchange Online organization で SMTP 認証を無効にし、SMTP 認証が必要なアカウント(メールボックス)に対してのみ有効にすることを強くお勧めします」と書かれています。
つまり全社オンではなく、複合機用の1アカウントだけオンが正しい形です。
「動かないから全社でオンにした」という状態になっていないか、この機会に確認してください。

3ステップの結果をどう読むか

3ステップの結果でこう判断します
STEP1で「smtp.office365.com+587+認証あり」だった → 影響を受けます。期限までに移行が必要です
STEP1で該当し、STEP2が既に「オフ」だった → すでに送れていないはずです。別の方式に切り替わっているか、機能が使われていない可能性があります
STEP1で社内サーバーや販売店のサーバーだった → 今回の件の直接の影響は小さいですが、そのサーバーの保守期限は別途確認してください

Microsoft 365 での移行先は4つ|どれを選ぶ?

Microsoftは、複合機やアプリからメールを送る方法を4つに整理して公開しています。それぞれ性格がまったく違うので、まず全体像を押さえてください。

方式 認証のしかた 社外に送れる メールボックス ポート 向くケース
クライアントSMTP送信 アカウント(OAuth推奨) 送れる 必要(ライセンスも必要) 587推奨/25 OAuth対応済みの新しい複合機
SMTPリレー 証明書または固定IP 送れる 不要 25 OAuth非対応の古い複合機
直接送信 認証なし 送れない 不要 25 社内宛だけで足りる場合
High Volume Email HVEアカウント/OAuth 送れない(社内宛) HVEアカウント 587 大量の社内通知

この表だけで、中小企業の選択肢はほぼ2つに絞れます。複合機がOAuthに対応しているなら「クライアントSMTP送信+OAuth」、対応していないなら「SMTPリレー」です。

なおMicrosoftは、自社開発のアプリや基幹システムからメールを送っている場合の代替として、Azure Communication Services のメール機能も案内しています。
ただしこれはプログラムから使う前提のサービスで、複合機の設定画面から選べるものではありません。複合機については、上の表の範囲で考えれば十分です。

① メーカーのOAuth対応ファームウェアに更新する(第一候補)

いちばん素直な打ち手は、複合機のファームウェア(機器の中のソフト)をメーカーが出したOAuth対応版に更新することです。
リコーは2025年7月以降、順次OAuth2.0対応ファームウェアをリリースしています。

ただし、更新すれば自動で直るわけではありません。リコーの告知には「ファームウェアの適用後は、お客様にてWeb Image Monitor上での認証設定が必要となります」と書かれています。
つまり更新後に、機器側でOAuthの認証設定をやり直す作業が発生します。

確認すること 具体的にどういうことか
自機が対応機種か メーカーの告知ページの対応機種リストで型番を照合する
ファームウェアの適用方法 保守契約で自動更新される機種と、専用ツールで手動更新が必要な機種があります
更新後の設定作業 機器側でOAuthの認証設定が必要。誰がやるのか(保守業者か自社か)を先に決める
TLS暗号スイート変更への対応 OAuth対応とは別枠です。両方に対応しているかを確認する

② SMTPリレー(受信コネクタ)=古い複合機の現実解

複合機がOAuthに対応していない、あるいは対応ファームウェアが出ない古い機種の場合、現実的な打ち手はSMTPリレーです。
SMTPリレーとは、Microsoft 365側に「この会社のこのIPアドレスから来たメールは、うちのものとして受け付ける」というコネクタ(受信コネクタ)を作って、認証の代わりにIPアドレスや証明書で本人確認する方式です。

この方式の大きな利点は3つあります。

利点 具体的にどういうことか
メールボックスが不要 公式に「メールを送信するのに、ライセンスされたメールボックスは必要ありません」と明記されています。複合機用にライセンスを1本買う必要がなくなります
送信元アドレスが自由 承認済みドメイン内なら、メールボックスのないアドレス(例:scan@自社ドメイン)でも送信できます
送信の上限が緩い クライアントSMTP送信の「1日10,000宛先・1分あたり30通」という制限の対象外になります

設定値は次のとおりです。サーバー名には、自社ドメインのMXエンドポイント(例:contoso-com.mail.protection.outlook.com のような形)を入れます。

複合機側の設定項目 入れる値
サーバー/スマートホスト 自社ドメインのMXエンドポイント
TCPポート 25
TLS/StartTLS 有効(TLS 1.3 または 1.2)
メールアドレス 承認済みドメイン内の任意のアドレス(メールボックス不要)
認証 設定しない(コネクタ側でIPまたは証明書で判定)
SMTPリレーを選ぶときの4つの前提
1. 固定のグローバルIPアドレスが必要です。公式に「動的 IP アドレスはサポートされていないか、許可されていません」と明記されています。回線が動的IPの会社は、回線側で固定IPオプションを追加する必要があります
2. ポート25が通る必要があります。プロバイダや社内のUTMがポート25を遮断していると使えません
3. SPFレコードの追記が必要です。これをやらないと、送ったメールが相手の迷惑メールフォルダに入ります
4. 公式に「IP アドレスがスパム ブロックリストに追加されると、メールが中断される可能性があります」と注記されています。会社の固定IPの評判(レピュテーション)が、そのままメールの届きやすさになるということです

Microsoft Learn「多機能デバイスまたはアプリケーションからメールを送信する方法(公式)」 ➡

③ 直接送信は社外に送れない。しかも将来は既定オフの方向

「認証なしで送れる」と紹介されることが多い直接送信(ダイレクト送信)ですが、中小企業のスキャンtoメールにはほぼ向きません。理由は2つあります。

1つめは、社外に送れないことです。公式には「外部の受信者(たとえば、Yahoo! アドレスまたは Gmail アドレスを持つ受信者)にメールを配信できません」と明記されています。
自社ドメイン宛だけなら使えますが、取引先にスキャンを送る用途では使えません。

2つめは、Microsoft自身がこの方式を絞る方向にあることです。公式ドキュメントには次のように書かれています。

ほとんどのお客様は、ダイレクト送信を使用する必要はありません。
お客様を保護するために、既定で直接送信を無効にするオプションに取り組んでいます。
(Microsoft Learn より引用)

いま直接送信で回避しても、数年後に同じ問題が再発する可能性が高いということです。応急処置としてなら使えますが、これを最終形にするのはおすすめしません。

設定でつまずく4つのポイント|ポート465は使えません

実務で意外につまずくのがここです。複合機の設定画面で「SSL」を選ぶとポート465になる機種がありますが、Microsoft 365のクライアントSMTP送信では465は使えません。
公式にこう書かれています。

デバイスまたはアプリケーションが TCP ポート 465 を推奨または既定で使用している場合、
Microsoft 365 または Office 365 でのクライアント SMTP 送信に必要な TLS のバージョンはサポートされていません。
(Microsoft Learn より引用)

よくある設定ミス 正しい値
ポートに465を入れている 587(推奨)または25にする
サーバー欄にIPアドレスを入れている DNS名 smtp.office365.com を使う(IPアドレスの直指定は不可)
TLSをオフにしている TLS 1.3 または 1.2 を有効にする(TLS 1.2未満しか対応しない機種は使えません)
送信元アドレスと認証アカウントが違う 別にする場合は「送信者」アクセス許可が必要です

最後の項目でつまずくと、次のようなエラーが返ってきます。この文言が出たら、認証に使ったアカウントと差出人アドレスが一致していないか、送信者アクセス許可が付いていないという意味です。

5.7.60 SMTP; クライアントには、この送信者として送信するアクセス許可がありません

なお、Microsoft 365 管理センターには、この設定を自動で診断してくれる機能があります。
管理者アカウントで「Microsoft 365を使用して電子メールを送信する」のテストを実行すると、新規設定・既存設定のトラブルシューティングを選んで確認できます。

TLS 1.0/1.1しか対応しない機器の、唯一の公式回避策

設定が正しいのに送れない場合、原因はTLSのバージョンかもしれません。Microsoftのトラブルシューティング文書には次のように書かれています。

最近、SMTP AUTH に TLS1.0/1.1 を使用する smtp.office365.com への接続の割合を拒否し始めました。
デバイスは TLS バージョン 1.2 以降をサポートしている必要があります。
(Microsoft Learn「Microsoft 365 を使用してメールを送信するプリンター、スキャナー、LOB アプリに関する問題を修正する」より引用)

つまり、TLS 1.0や1.1しか話せない古い複合機は、基本認証の期限とは無関係にすでに拒否され始めています。この場合、公式に用意されている回避策は1つだけです。

手順 具体的にどういうことか
1 Exchange管理センターの[設定]→[メール フロー]→[セキュリティ]で「従来の TLS クライアントの使用を有効にする」をオンにする(PowerShellなら Set-TransportConfig の AllowLegacyTLSClients を True にする)
2 複合機側の接続先サーバー名を smtp-legacy.office365.com に変更する
これは延命策です。恒久策ではありません
この回避策を使うと、会社全体でTLS 1.0/1.1という古い暗号化を許可することになります。セキュリティ水準は下がります。
使うなら「対応機種への入れ替えやクラウド保存への移行が終わるまでの、期限を決めたつなぎ」として使ってください。
当社では、この設定を入れる場合は必ずいつまでに解除するかを先に決めていただくようにしています。決めないまま入れると、数年後に理由を誰も知らない例外設定として残ります。

送れない原因は、認証以外にもある

「スキャンが届かない」というご相談のうち、実際には認証と関係ないケースも少なくありません。切り分けの順番を表にしておきます。

症状 疑うところ 確認方法
社内にも社外にも届かない 認証設定・ポート・TLS 本記事のSTEP1〜2。あわせて下のTelnet確認
社内には届くが社外に届かない 直接送信になっている 接続先サーバー名とコネクタの有無(上の判定表)
相手の迷惑メールフォルダに入る SPF・DKIM・DMARCが未設定 DNSのSPFレコードに送信元が入っているか
大きいファイルだけ届かない 添付ファイルの容量制限 解像度を下げる/白黒にする/クラウド保存に切り替える
ある日突然止まった アカウントの削除・ブロック そのアカウントでWebのOutlookにログインしてテスト送信できるか
特定の宛先だけ届かない 相手側の受信設定・アドレス帳の誤り 複合機のアドレス帳を書き出して宛先を確認

ポートが塞がれているかどうかは、複合機と同じネットワークにあるパソコンからTelnetで確認できます。
コマンドプロンプトで telnet を起動して「open smtp.office365.com 587」と入力し、「220 …… Microsoft ESMTP mail service ready」のような応答が返ればポートは通っています。
応答がなければ、プロバイダかUTM・ファイアウォールがポートを遮断しています。

Microsoft Learn「プリンター・スキャナー・LOBアプリのメール送信の問題を修正する(公式)」 ➡

Google Workspace の場合は3つの方法

Google Workspaceの場合、Googleは3つの方法を公式に案内しています。
すでに2025年5月1日でアドレスとパスワードだけの方式は終わっているため、この3つのどれかに寄せる必要があります。

方式 サーバー名 ポート 認証 社外に送れる 1日の上限
SMTPリレー(推奨) smtp-relay.gmail.com 25/465/587 IPアドレス 送れる 1ユーザー10,000宛先
Gmail SMTPサーバー smtp.gmail.com 25/465/587 アドレス+アプリパスワード 送れる 2,000件
制限付きGmail SMTPサーバー aspmx.l.google.com 25 不要 送れない ユーザーごとの送信制限

Googleも「デバイスやアプリからメールを送信する場合は、SMTP リレーサービスを使用することをおすすめします」「これが最も安全な方法です」と明記しています。
管理コンソールでSMTPリレーの設定を行い、複合機側は smtp-relay.gmail.com に向けます。

アプリパスワードは応急処置にすぎない

Googleの公式ヘルプには「プリンタから直接アカウントを認証しようとしていて、アカウントで 2 段階認証プロセス が有効になっている場合は、認証エラーが表示されます。このエラーを解決するには、アプリ パスワードを設定します」とあります。

アプリパスワードとは、その機器専用に発行する長いパスワードのことです。これを使えば当面は動きますが、パスワードを機器に保存する形は変わりません。
複合機を廃棄・返却するときに消し忘れると、そのまま生きた認証情報が外に出ます。

当社の推奨(Google Workspaceの場合)
台数が少なく、すぐ止まると困る → まずアプリパスワードで動かし、期限を決めてSMTPリレーへ移す
拠点が複数あり、固定IPがある → 最初からSMTPリレーにする
社内宛だけで足りる → 制限付きSMTPサーバー(認証なし)で十分。パスワードを機器に持たせなくて済みます
いずれの場合も、機器を入れ替える/返却するときにアプリパスワードを削除することを手順書に1行入れてください

Google Workspace 管理者ヘルプ「プリンタ、スキャナ、アプリからのメール送信(公式)」 ➡

そもそも「メールで送らない」という選択肢

ここまで認証方式の話をしてきましたが、中小企業にとって最も効く打ち手は、実は別のところにあります。それは「スキャンをメールで送るのをやめる」ことです。

興味深いことに、メーカー自身もそう案内しています。リコーは対応ファームウェアがリリースされるまでの対応として、公式告知でこう書いています。

Exchange OnlineのSMTP認証における基本認証廃止から、ファームウェアリリースまでの対応といたしまして、
メール送信を使用しない手段に切り替えていただくか、またはExchange Online以外のメールサービスをご利用ください。
(リコー公式告知より引用)

複合機とPCの設定確認

スキャンの送り先には、メール以外に2つの選択肢があります。

送り先 仕組み 認証の変更に左右されるか 向くケース
スキャンtoメール 複合機がメールを送る 今回の影響を受ける 社外に直接送りたいとき
スキャンtoフォルダー 社内のパソコンや共有フォルダーに保存(SMB) 受けない 社内でファイルを回すとき
スキャンtoクラウド SharePoint・OneDrive・Googleドライブに保存 受けない ほとんどの社内業務

当社の推奨は「社内はクラウド保存、社外送付だけメール」

実際のご相談でいちばん多い使い方は、社員が自分宛にスキャンを送って、あとでパソコンで開くというものです。これは本来メールを使う必要がありません。
スキャンの保存先をクラウドの共有フォルダーにすれば、メールを一切使わずに同じことができます。

しかもこの方式なら、Microsoft 365やGoogle Workspaceを契約している会社は追加費用がかかりません。
すでに1人あたり1TBのOneDriveや、共有ドライブを持っているはずです。

やりたいこと 従来(メール) 切り替え後 良い点
自分用にスキャンする 自分宛にメール送信 クラウドの個人フォルダーに保存 メール容量を消費しない・添付サイズ制限がない
部署で共有する 部署の全員にメール送信 部署の共有フォルダーに保存 誰が最新版か分からなくならない
取引先に送る 取引先宛にメール送信 クラウドに保存 → 共有リンクで送る 重い添付を送らずに済む
経理に回す 経理宛にメール送信 経理の共有フォルダーに保存 電子帳簿保存法の保存要件と整理しやすい
ただし、切り替え前に決めておくこと
スキャンの保存先フォルダーを誰が決めるかを先に決めてください。決めないまま案内すると、社員それぞれが好きな場所に保存して、結果的にどこにあるか分からなくなります。
また、複合機からクラウドへ直接保存できるかは機種によって違います。対応していない機種は、いったん社内の共有フォルダー(スキャンtoフォルダー)に置き、そのフォルダーをクラウドと同期させる形が現実的です。
スキャンした書類が請求書や領収書の場合は、電子帳簿保存法の保存要件も一緒に整理しておくと二度手間になりません。

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費用の目安|30名の会社で4パターン試算

「複合機を買い替えないといけないのでは」と心配される方が多いのですが、実際には費用ゼロで済むケースが少なくありません。打ち手ごとの費用感を整理します。

打ち手 初期費用の目安 毎月の費用 備考
ファームウェア更新+設定変更 0円〜5万円 0円 保守契約に含まれる場合は無償。訪問設定を依頼すると作業費が発生します
SMTPリレーに切り替え 0円〜5万円 0円〜3,000円 Microsoft 365側の追加費用は0円。固定IPが必要な場合は回線オプション代がかかります
外部のメール配信・リレーサービス 0円〜 3,000円〜 サービスによります。既存の複合機をそのまま使える点が利点です
クラウド保存に切り替え 0円 0円 すでに契約しているMicrosoft 365/Google Workspaceを使うため
複合機の入れ替え 0円(リース契約の場合) 3,000円〜/台 リース満了が近い場合はこのタイミングで検討する価値があります

これを30名・複合機2台の会社で並べると、次のようになります。金額はあくまで目安で、機種・回線・保守契約の内容によって変わります。必ず見積りで確認してください。

パターン 具体的にどういうことか 5年総額の目安
A:最小 ファームウェア更新のみ(保守契約内) 0円
B:標準 SMTPリレーに切り替え+固定IP追加 約6万〜23万円
C:外部サービス メール配信サービスを契約 約18万〜30万円
D:やめる スキャンをクラウド保存に切り替え 0円
判断の順番はこうしてください
1. まずDで足りないかを考える。社内で回すだけならクラウド保存で解決し、費用は0円です
2. 社外にメールで送る必要が残るなら、Aが可能かをメーカーの告知で確認する
3. Aが無理(対応ファームウェアが出ない古い機種)ならBを検討する
4. Bも無理(固定IPが取れない、ポート25が通らない)ならCを検討する
この順番で見ると、多くの中小企業はAかDで終わります。いきなり複合機の入れ替えを検討する必要はありません。

移行のときに必ず一緒に直したい3つ

認証方式を切り替えるときは、メールの設定を触ることになります。このタイミングで一緒に片付けておくと二度手間にならない項目が3つあります。

一緒に直すこと なぜ必要か やること
SPF・DKIM・DMARC SMTPリレーや直接送信では、SPFに送信元を追記しないとメールが迷惑メール扱いになります DNSにSPFレコードを追記し、DKIM・DMARCも設定する
送信元アドレスの整理 退職者のアドレスや個人名のアドレスが複合機に設定されていることが実際によくあります scan@自社ドメイン のような役割用のアドレスに統一する
宛先アドレス帳の棚卸し 複合機のアドレス帳に退職者や取引終了先が残っていると、誤送信の原因になります アドレス帳を書き出して不要な宛先を削除する
実際のご相談でいちばん多いのがこれです
複合機のメール送信に、退職した担当者の個人アカウントが設定されたままになっているケースです。
そのアカウントを退職手続きで削除した瞬間に、スキャンtoメールも一緒に止まります。今回の認証変更とは関係なく突然止まるので、原因の切り分けに時間がかかります。
退職手続きのチェックリストに「複合機・FAX・監視機器に本人のアカウントが使われていないか確認する」の1行を足すだけで防げます。

c-compe.com「なりすましメールを防ぐ SPF・DKIM・DMARC を簡単に解説」 ➡

情シスがつまずく落とし穴9つ

落とし穴 何が起きるか 対策
複合機だけを見て、他の機器を数えていない 監視装置・勤怠機器・基幹システムの自動送信も同じ認証を使っていて、あとから次々に止まる メールを送る「機械」を全部書き出す。誰も苦情を言わないものほど危険です
セキュリティの既定値群を無効にして解決した 会社全体の多要素認証が外れて、セキュリティが大きく下がる 多要素認証は維持し、複合機側をSMTPリレーやクラウド保存に切り替える
全社でSMTP AUTHをオンにした 全ユーザーのアカウントがパスワードだけで悪用されうる状態になる Microsoftの推奨どおり、組織はオフ・必要な1アカウントだけオンにする
ファームウェア更新で完了と思っている TLS暗号スイート変更の側で引っかかって止まる OAuth対応とTLS対応の2つを別々に確認する
SPFを追記していない 送信できているのに相手の迷惑メールフォルダに入り、届いていないと言われる 移行と同時にSPFを追記し、テスト送信で相手の受信箱に入るか確認する
ポート25が塞がれていることに気づいていない SMTPリレーの設定をしたのに送れない 事前にプロバイダとUTM・ファイアウォールの設定を確認する
複合機に退職者のアカウントを設定している 退職処理と同時に止まる 役割用のアドレスに統一し、退職手続きに確認項目を追加する
テストを社内宛だけで済ませた 社内には届くのに社外に届かない(直接送信を使っていた等) 必ず社外の実アドレスにテスト送信して受信を確認する
レガシTLSの回避策を入れて放置した 会社全体でTLS 1.0/1.1を許可したまま数年が過ぎ、理由を誰も知らない例外設定になる 入れるときに解除する期限を先に決めて記録する
最後の項目は必ず守ってください
社内宛のテストだけで「直った」と判断すると、直接送信のように社外に配信できない方式に切り替わっていても気づけません。
テストは社内宛と社外宛の2通を送り、両方の受信箱(迷惑メールフォルダではなく受信トレイ)に届いたことを確認してから完了にしてください。

メーカー公式の告知はどこを見る?

自社の複合機が対応対象かどうかは、メーカーの公式告知ページで型番を照合するのが唯一確実な方法です。主要メーカーは専用の告知ページを公開しており、対応機種リストと対応時期が掲載されています。

メーカー 掲載内容 見るべきポイント
リコー 影響を受ける機能、OAuth2.0対応機種および対応計画、設定ガイド 対応機種リストに自機の型番があるか/TLS暗号スイート変更の告知も別にあります
富士フイルムビジネスイノベーション 対象商品リスト、商品別の対応区分(①②)、対策版ファームウェアのバージョン 自機の「対応区分」がどちらか/区分によって必要な対応が違います

これ以外のメーカー(キヤノン・京セラ・シャープ・コニカミノルタなど)も同様の告知を出しています。
「メーカー名+Exchange Online 基本認証 廃止」で検索するか、保守を依頼している販売店に型番を伝えて確認するのが早いです。

リコー公式告知「Exchange OnlineのSMTP認証における基本認証廃止に伴う影響と対応」 ➡

富士フイルムビジネスイノベーション公式「Basic認証廃止に伴う弊社製品への影響と対策」 ➡

販売店に聞くときの一文
そのままメールに貼って使える文面です。
「弊社で使用している複合機(型番:〇〇)について、Microsoft 365のSMTP認証の基本認証廃止と、TLS暗号スイートの範囲変更の2点への対応状況を教えてください。対応ファームウェアの提供時期と、適用後に弊社側で必要になる設定作業もあわせてご案内ください。」
この2点を分けて聞くのがコツです。片方だけの回答で終わらせないための書き方です。

補助金は使える?

結論としては、今回の設定変更そのものに使える補助金はほとんどありません。既存の契約や機器の設定を変えるだけの作業は、補助対象になりにくいためです。
ただし、これをきっかけに業務の仕組みを変える部分には使える可能性があります。

やること 補助金の対象になりうるか 補足
複合機の設定変更・ファームウェア更新 対象外の可能性が高い 既存機器の設定変更にあたります
SMTPリレーの設定(受信コネクタ) 対象外の可能性が高い 既存契約の設定変更にあたります
ペーパーレス化・文書管理システムの導入 対象になりうる デジタル化・AI導入補助金の登録ITツールに該当するかを確認します
複合機本体の購入 原則対象外 汎用の事務機器は補助対象外とされることが多いです

おすすめの組み立て方は二段構えです。認証の切り替えは費用をかけずに自力で片付け、浮いた原資と補助金は「紙をスキャンして回す運用そのものをやめる」側に回します。
この順番だと、そもそもスキャンの回数が減ってから次の投資を検討できます。

なお補助金は年度ごとに要件が変わります。交付決定前に発注したものは対象外になるため、着手前に必ず公募要領を確認し、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

今日からできる3ステップ

対応スケジュール

順番 やること 所要時間 費用
① Exchange管理センターの[レポート]→[メール フロー]→[SMTP AUTH クライアント]を90日で開き、TlsAuthLogin の行を書き出す 20分 0円
② 書き出したアカウントが、どの機械のものかを特定する(複合機・FAX・監視装置・勤怠・基幹システム) 30分 0円
③ 複合機の型番をメーカー告知で照合し、OAuth対応とTLS対応の2点を確定させる 20分 0円

①で実データから始めるのがコツです。記憶や台帳から機器を数えると必ず漏れます。
レポートに出てくる送信者アドレスを起点にすれば、「そんなアカウントでメールを送っている機械があったのか」という発見のほうが多いはずです。

複合機だけ対応して安心していると、半年後に監視装置の警報メールが届いていなかったと分かる、という事故が起きます。メールを送っている機械の一覧は、この機会に作っておく価値があります。

この3ステップの成果物は、そのまま販売店やベンダーへの相談資料になります。
「型番」「現在の設定値」「メールを送っている機械の一覧」の3点がそろっていれば、見積りの精度も上がり、不要な機器入れ替えの提案を見分けられます。

アーデントにご相談いただく場合
当社は複合機・Microsoft 365・Google Workspace・ネットワークをまとめて扱っているため、「複合機の設定」「メール側の設定」「回線の固定IP」を1つの窓口で判断できます。
この3つが別会社に分かれていると、障害時に業者間で原因の押し付け合いになりがちです。
自社での確認が難しい場合や、他社の見積りが妥当か知りたい場合は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 2026年12月を過ぎると、必ず送れなくなりますか?

A. 必ず止まるわけではありません。2026年12月末に起きるのは、既存の会社で基本認証が「既定でオフ」に切り替わることで、管理者が必要と判断すれば有効化して使い続けられます。
ただし最終的な廃止日が2027年後半に発表される予定なので、延命はできても先延ばしには限度があります。また多要素認証を有効にしている会社は、有効化そのものができない場合があります。

Q. 複合機を買い替えないと対応できませんか?

A. 多くの場合、買い替えは不要です。メーカーがOAuth対応のファームウェアを提供している機種なら更新と設定変更で済み、提供されない古い機種でもSMTPリレーに切り替える方法があります。
さらに、社内でファイルを回すだけならスキャンの保存先をクラウドに変えるだけで解決し、追加費用は0円です。買い替えを検討するのは、リース満了が近い場合に限って構いません。

Q. 従業員10名の会社でも対応が必要ですか?

A. 必要です。今回の変更は会社規模に関係なく、Microsoft 365やGoogle Workspaceを使っていて、かつ複合機からメールを送っている全社に影響します。
むしろ情シス担当がいない小規模な会社ほど、止まってから原因が分からず業務が長く止まりやすいので、先に確認しておく価値があります。確認自体は30分・費用0円で終わります。

Q. スキャンしたPDFがメールで届かないのは、この件と関係ありますか?

A. 関係している可能性がありますが、別の原因のこともあります。
添付ファイルの容量制限を超えている、相手側で迷惑メール判定されている、複合機に設定したアカウントが退職処理で削除された、といった原因も多いです。
切り分けの順番は、まず社内宛に送って届くかを見て、次に社外宛を試し、それでも駄目なら本記事のSTEP1〜2で認証設定を確認する、という流れが確実です。

まとめ

論点 結論
期限 2026年12月末に既存テナントで既定オフ。最終廃止日は2027年後半に発表予定
すでに影響が出る会社 多要素認証を有効にしている会社/2020年以降に契約した会社/Google Workspaceの会社(2025年5月1日に終了済み)
見落とされる落とし穴 TLS暗号スイートの変更で、OAuth対応済みの機種でも止まる場合がある
確認方法 Exchange管理センターの「SMTP AUTHクライアントレポート」を90日で見る(TlsAuthLoginの行が対象)+複合機のサーバー名・ポート・認証の3項目
TLSで止まる機器 smtp-legacy.office365.com への切り替えが唯一の公式回避策。ただし期限を決めた延命策として使う
移行先 OAuth対応ファームウェア/SMTPリレー/クラウド保存の3択。直接送信は社外に送れず将来も絞られる方向
費用 多くの会社は0円〜数万円。いきなり複合機の入れ替えを検討する必要はない
最初にやること Exchange管理センターの「SMTP AUTHクライアントレポート」を90日で開き、TlsAuthLoginの行を書き出す(20分・0円)

複合機のスキャンtoメールは、止まってから直すと業務が完全に止まります。一方で、確認そのものは30分・費用0円で終わり、多くの会社は追加費用なしで対応できます。
期限まで残り3か月あまりのこの時期に、一度確認しておくことをおすすめします。

Microsoft365|企業向けの必須オフィス、クラウドツールを見る ➡

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c-compe.com「複合機・プリンターのセキュリティ対策はどこまで必要?」 ➡

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