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【2026年版】オフィス移転のIT段取りチェックリスト|回線・電話番号・LAN工事の手配時期と費用の目安

移転IT段取り図

結論から申し上げます。オフィス移転で業務が止まる原因のほとんどは、内装でも引越し業者でもなく、通信回線と電話の手配が間に合わないことです。 
机や椅子は移転の1か月前に決めても間に合いますが、インターネット回線の開通工事は申し込みから1〜3か月かかることがあり、あとから短縮できません。

そしてもうひとつ、移転のご相談でいちばん多い誤解が「番号ポータビリティがあるから、移転しても電話番号はそのまま使えるはず」というものです。これは正しくありません。番号ポータビリティは電話会社を変える仕組みであって、場所を変える仕組みではないからです。

この記事では、オフィスの移転・新規開設にあたって情報システム担当(兼任の総務担当を含む)がやるべきIT側の段取りを、中小企業(従業員30〜300名)向けに時系列で整理します。 
総務省とNTT東日本が公開している一次情報にもとづいて、番号が変わる条件、工事費の実額、手配のリードタイムまで具体的に解説します。

目次

オフィス移転のIT準備は、いつから始めればいい?

先に全体像をお見せします。IT側の作業は「物件を決める前」から始まっています。物件が決まってから動き出すと、回線の開通が移転日に間に合わないことがあるためです。

時期 IT側でやること 遅れたときに起きること
6か月前(物件選定中) 候補物件のIT下見。回線の引込み・電気容量・配線ルートを確認 契約後に「光が引けない」と分かり、物件から選び直しになる
3か月前 回線・電話の申し込み。番号が変わるかの確認。LAN工事の見積り 移転日に回線が開通せず、当日インターネットが使えない
2か月前 LAN配線の設計確定。ネットワーク機器・ラックの手配 内装工事が進んでから配線を通せず、露出配線になる
1か月前 旧オフィスの撤去日と新オフィスの開通日を確定。並行期間を作る 旧回線を止めた瞬間に新回線が使えず、丸1日つながらない
2週間前 住所変更が必要なIT側の棚卸し。社内周知と当日の連絡手段の確保 当日に誰にも連絡がつかず、現場判断ができない
前日〜当日 機器の搬出入と設置、疎通確認 翌営業日の朝に全員が業務を始められない
翌営業日〜1週間 不具合の受付窓口を立てる。旧回線の解約 旧回線の基本料を数か月払い続ける

移転スケジュール

回線と電話は、内装や家具より先に動かす

移転プロジェクトは、どうしてもレイアウトや内装の話から盛り上がります。ただ、レイアウトは移転の1か月前でも変えられますが、回線の開通日は変えられません。 
ビルの共用部に光ファイバーが来ていない場合、ビルの外から引き込む工事が必要になり、管理会社の承諾や道路使用の手配まで絡んで、さらに時間がかかります。

情報システム担当が最初にやるべきことは、内装の打ち合わせに出ることではなく、移転先の候補が3つあるうちに、その3つすべてを見に行くことです。ここだけは、あとから取り返せません。

物件を決める前に、IT担当が必ず確認する6つのこと

内見のときに、不動産会社やビル管理会社の担当者に聞けば答えが出るものばかりです。逆に、この6つを確認しないまま契約すると、あとから数十万円単位の追加工事が発生します。

確認すること なぜ必要か 誰に聞くか
① 光ファイバーがビルに来ているか 来ていないと引込み工事が必要で、1〜3か月余計にかかる ビル管理会社/回線事業者
② MDF・EPSから自社区画までの経路 配管が塞がっていると、ケーブルを通せない ビル管理会社
③ 電気容量(契約アンペア) あとから増やせない建物がある。サーバーや複合機が動かせない ビル管理会社/電力会社
④ OAフロアの有無と配線ルート 無いとモール(露出配線)になり、見た目と安全性が下がる 内装会社
⑤ 通信機器を置く場所 ラックを置く場所と電源・換気がないと、機器を床置きすることになる 内装会社
⑥ 電話番号が変わるかどうか 変わる場合、名刺・封筒・Webの作り直しが発生する NTT東日本/西日本

「MDFまで光が来ている」の意味を知っておく

MDF(主配線盤)とは、ビルの共用部にある回線の集約盤のことです。ビルの外から引き込まれた光ファイバーは、まずここに入り、そこから各テナントの区画へ分配されます。「MDFまで来ている」状態であれば、あとはMDFから自社の部屋までケーブルを通すだけで済みます。

逆に、MDFまで来ていない場合は、電柱からビルへ引き込むところから始まります。この工事にはビルオーナーの承諾が必要で、断られることも珍しくありません。内見のときに「光は来ていますか」と聞くだけで、この差が分かります。

電気容量は、あとから増やせないことがある

見落とされやすいのが電気です。パソコン1台の消費電力はたかが知れていますが、複合機、サーバー、UPS(無停電電源装置)、電子レンジ、エアコンまで足すと、小さなオフィスでもすぐに上限に近づきます。 
ビルによってはテナントごとの上限が決まっていて、増設できないことがあります。

特に複合機は、印刷を始める瞬間に大きな電流を使います。移転後に「複合機を動かすとブレーカーが落ちる」というご相談は実際にあります。分電盤の写真を撮っておき、内装会社に見せて判断してもらうのが確実です。

内見のときに写真を撮っておく5か所
・MDF(共用部の回線盤)の中と、空きスペースの有無
・EPS(配管スペース)の扉を開けたところ
・分電盤(ブレーカー)の全体と、契約アンペアの表示
・自社区画の天井裏または床下(OAフロアなら床を1枚外す)
・エアコンの室外機置き場と、通信機器を置けそうな場所

移転前後の配線

なぜ移転すると電話番号が変わるのか?

ここが移転でいちばん多いご相談です。まず、なぜ番号が変わるのかを正しく理解しておくと、判断がとても楽になります。

総務省が公開している「電話番号に関するQ&A」には、次のように書かれています。「電話番号のうち、市外局番は地域を示しており、市内局番はその地域内にある営業所内の電話交換機(ダイヤルした番号から相手の電話を探してつなぐ機械)を示すようになっています」。 
そして「引っ越し先の営業所が引っ越し前と同じならば引き続き同じ電話番号を使える可能性がありますが、引っ越し前と違う場合には、番号は変わることとなります」とされています。

つまり、電話番号が変わるかどうかは、同じ区内かどうか・同じ町内かどうかでは決まりません。移転先がNTTの同じ収容局(営業所)につながっているかどうかで決まります。同じ区内での移転でも番号が変わることはありますし、区をまたいでも変わらないことがあります。

総務省「電話番号に関するQ&A」 ➡

番号ポータビリティは「会社を変える仕組み」で「場所を変える仕組み」ではない

番号ポータビリティ(LNP)という言葉があるので、「制度があるのだから移転しても番号は残せるはず」と考えてしまいがちです。しかし総務省の定義は明確です。 
「固定電話番号の番号ポータビリティとは、利用者が固定電話番号を変更することなく、固定電話サービスの提供を行う会社を変更できる仕組みです」。

守られているのは「会社を変えても番号が変わらないこと」であって、「引っ越しても番号が変わらないこと」ではありません。ここを取り違えたまま移転の日程を組んでしまうと、開通の直前になって名刺と封筒を刷り直すことになります。

なお制度としては前進していて、電気通信番号計画にもとづき、令和7年1月末日以降、固定電話番号を使用したサービスを提供する全ての事業者は、原則、固定電話番号の番号ポータビリティを可能とする必要があるとされています。 
関連するガイドラインは令和7年1月30日に策定され、適用日は令和7年1月31日です。ただし、総務大臣が特に認める次のような例外があります。

番号ポータビリティが実施されない例外 中小企業にとっての意味
NTT東西以外の事業者が払い出した番号を、NTT東西の加入電話・INSネットへ移す場合 他社のIP電話で取った番号を、あとからNTTの固定電話に移すことはできない
NTT東西がひかり電話用として払い出した番号を、加入電話・INSネットへ移す場合 ひかり電話で新しく取得した番号は、アナログ回線に戻せない
移転元と移転先の設備で、収容できる電話番号の番号帯が異なる場合 事業者を変えたくても、番号の種類によっては受け入れられないことがある

あわせて注意したいのが、番号ポータビリティを使うと、変更前の電話会社との契約は解除(解約)となり、変更後の会社と新規契約する扱いになる点です。 
総務省も、工事費の分割払いの残額があれば精算が必要になること、インターネット回線を一緒に契約している場合はその解約に別の手続きが必要になることを注意点として挙げています。

総務省「固定電話の番号ポータビリティ」 ➡

番号が変わるかどうかは、どこで確かめる?

方法は単純です。現在の住所と移転候補先の住所をNTT東日本(または西日本)に伝えて、同じ収容局かどうかを調べてもらいます。物件を契約する前、内見の段階で聞いておくのが理想です。 
候補が3つあるなら3つとも聞いておけば、「番号が変わらない物件」を選ぶという判断もできます。

この確認は無料で、その場で回答が得られることも少なくありません。にもかかわらず、移転の1か月前まで誰も聞いていない、というケースが本当に多くあります。

番号を変えたくないときの3つの選択肢

収容局が変わってしまう場合でも、打てる手はあります。方式によって費用も使い勝手も変わるので、早い段階で決めてください。

方法 できること 向いている会社 注意点
① 同一エリア内で同番移行する ひかり電話へ切り替えて番号をそのまま持ち込む 移転先が同じエリア内に収まる会社 エリア外へ移ると使えない。1番号ごとに工事費がかかる
② クラウドPBXへ切り替える 電話をインターネット上に置き、場所に縛られなくする 今後も移転や拠点追加の可能性がある会社 番号の引き継ぎ可否は事前確認が必要
③ 旧番号を残して転送する 旧回線を残し、新しい番号へ転送する 取引先への周知に時間をかけたい会社 旧回線の基本料と転送通話料が二重にかかる

当社がおすすめしているのは②です。理由は費用ではなく、移転のたびに同じ悩みを繰り返さずに済むからです。電話をクラウド側に持たせておけば、次に移転しても、拠点を増やしても、電話番号の話は発生しません。 
1回目の移転で②へ切り替えておくと、2回目以降の移転コストがはっきり下がります。

回線とネットワークはいつ手配する?リードタイムの目安

手配のリードタイム(申し込みから使えるようになるまでの期間)を、余裕をみた目安として整理しました。年度末などの繁忙期はさらに延びると考えてください。

手配するもの リードタイムの目安 先に決めておく必要があること
光回線(ビルに引込み済み) 3週間〜1.5か月 契約者名義、設置場所、工事の立ち会い者
光回線(ビルへの引込みから) 1.5〜3か月以上 ビルオーナーの承諾、配管の空き
電話(同番移行あり) 1〜2か月 移転先の収容局、必要なチャネル数と番号数
クラウドPBX 2週間〜1か月 番号の引き継ぎ方針、電話機かスマホか
LAN配線工事 内装工事に合わせて2週間〜1か月 レイアウト確定、情報コンセントの位置と数
ネットワーク機器(スイッチ・AP・UTM) 2週間〜1.5か月 台数と型番。在庫状況によって延びることがある
複合機の移設 2週間〜1か月 設置場所、電源、ネットワーク設定

回線は「申し込み日」ではなく「工事日」で押さえる

よくある失敗が、申し込みを済ませただけで安心してしまうことです。工事日は事業者の空き状況で決まるので、申し込んだ順に埋まっていきます。移転日が決まった時点で、その2週間前あたりの工事日を先に押さえてしまうのが安全です。

また、工事の立ち会いが必要な場合、内装工事の真っ最中で現場に入れないという事態も起きます。内装会社と回線工事のスケジュールは、必ず同じ表に並べて管理してください。

新旧2拠点の並行期間を必ず作る

旧オフィスの回線を止めた瞬間に新オフィスの回線が開通する、という段取りは避けてください。工事が半日ずれただけで、その日は全社がインターネットに触れなくなります。

実務的には、新オフィスの回線を移転日の1〜2週間前に開通させ、両方が使える期間を作ります。旧回線の余分な基本料は1〜2週間分だけですから、業務が止まるリスクと比べれば安いものです。 
この期間に、新オフィスで一度パソコンをつないでみて、速度と疎通を確認しておきます。

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電話とFAXはどう移す?方式ごとの判断表

いま何を使っているかによって、移転時にできることが変わります。まず自社の回線がどれなのかを確認してください。契約書や請求書の名称で判断できます。

いま使っている方式 移転時にできること 移転を機に検討したいこと
加入電話(アナログ) 同じ収容局内なら番号継続。局が変わると番号も変わる ひかり電話またはクラウドPBXへの切り替え
INSネット(ISDN) 同上。ただしサービス自体が終了に向かっている 移転と同時の切り替えが最も費用対効果が高い
ひかり電話・ひかり電話オフィスA 同一番号で移行可能なエリア内なら番号を持ち込める チャネル数と番号数の見直し
クラウドPBX 住所が変わっても電話番号と設定はそのまま 拠点追加・スマホの内線化
FAX専用回線 回線ごと移設するか、インターネットFAXへ移行 紙のFAXをやめて、受信をメールに寄せる

ISDN(INSネット)を使っているなら、移転が最後の切り替えチャンス

INSネットは終了に向かっています。 
NTT東日本の公式情報では、2024年8月31日にINSネット関連サービスの新規申込受付が終了しており、「ディジタル通信モード」は2024年1月から段階的に終了、切替後のデータ通信(補完策)も2028年12月31日に提供を終了する予定とされています。

ISDNは電話だけでなく、受発注のEDIやPOS、警備システムの通報回線としても使われています。移転のときであれば、どのみち機器の設置と配線をやり直すので、切り替えの工事費を移転工事の中に吸収できます。 
移転とは別のタイミングでやると、同じ作業を二度やることになります。

移転前に確認したい「ISDNにつながっている機械」
・受発注システム(EDI)や販売管理システムのデータ送受信
・POSレジ、クレジットカード決済端末
・警備会社への通報装置、エレベーターの非常通報
・FAX複合機のG4通信、テレビ会議システム
・自動検針・遠隔監視の装置

LAN工事とネットワーク機器はどう決める?

LAN工事は内装工事と同じタイミングで行います。天井や床を開けているうちに配線を通してしまえば安く済み、あとからだと壁を這わせる露出配線になります。逆に言えば、内装のレイアウトが決まらないとLAN配線も決められません。

情報コンセントの数は「席数+α」で決める

情報コンセント(壁や床にあるLANの差込口)は、あとから増やすのが最も高くつく部分です。ケーブル1本を追加で通すだけで数万円かかることもあります。最初に少し多めに用意しておくのが、結果的に安くなります。

場所 必要な口数の考え方 見落としやすいもの
執務席 1席あたり1〜2口。将来の増員分も見込む デスクの島の端に予備を1〜2口
会議室 1室あたり2〜4口 Web会議機器と壁掛けモニター用
複合機の設置場所 1台につき1口 移動する可能性があるなら2か所に用意
天井(アクセスポイント) AP1台につき1口。PoE給電が前提 あとから天井裏に通すのは非常に高い
受付・エントランス 1〜2口 受付タブレット、電子錠、防犯カメラ

ラック(通信機器の置き場所)を最初に決める

ルーター、UTM、スイッチングハブ、電話の主装置、NASなどをどこに置くかを決めていないと、最後にどこかの床へ雑然と積むことになります。床置きは埃を吸い、蹴られてケーブルが抜け、熱がこもります。移転後に「ときどきネットワークが落ちる」原因の多くはここです。

小さなオフィスでも、壁掛けの小型ラックか、6U程度の自立ラックを1台用意してください。必要なのは、専用の電源と、扉を開けられる前面のスペース、そして熱がこもらない換気です。倉庫の奥や、書庫の中は避けてください。

配線図とポート台帳を、工事の成果物として受け取る

LAN工事が終わったあと、業者から何を受け取るかを契約前に決めておいてください。中小企業の移転で最も多い失敗は、工事は無事に終わったのに、どのコンセントがラックのどのポートにつながっているのかを誰も知らない、という状態で引き渡されることです。

受け取るべきものは、配線図(どの席のコンセントがどの番号か)、ポート台帳(コンセント番号とスイッチのポート番号の対応表)、そして導通試験の結果です。ここまで揃っていれば、1年後に「この席だけつながらない」と言われたときに、5分で切り分けができます。 
無ければ、床下を開けるところから始めることになります。

あわせて、情報コンセントには必ず番号を貼ってもらいます。台帳と番号が一致していれば、情シスが1人しかいない会社でも、退職や異動でネットワークが分からなくなることを防げます。

移転当日から翌営業日までの段取り

当日にやることを時間で区切って決めておくと、現場での判断が減ります。特に「誰が最後に旧オフィスを出るか」と「翌朝いちばんに誰が新オフィスを開けるか」は必ず先に決めてください。

タイミング やること 担当
前日まで 新オフィスで回線の疎通確認。Wi-Fiとプリンターを1台で試す 情シス
前日 各自のパソコンを電源から抜き、ケーブルをまとめて名前を貼る 全社員
当日 午前 サーバー・通信機器の搬出。旧オフィスの回線機器を撤去 情シス+業者
当日 午後 ラック設置、機器接続、複合機のネットワーク設定 情シス+業者
当日 夕方 全席で1台ずつ通信確認。電話の発着信テスト(外線・内線・FAX) 情シス
翌営業日 朝 困りごとの受付窓口を立て、担当者が席を離れない 情シス
翌営業日 夕方 残った不具合を一覧にし、優先順位をつけて対応日を決める 情シス
移転当日にいちばん多いトラブル3つ
・電話の外線が鳴らない(回線の切り替えが翌日扱いになっていた)
・複合機からスキャンしたデータがフォルダーに届かない(保存先のIPアドレスが変わった)
・特定の業務システムにつながらない(接続元のIPアドレスで制限がかかっていた)

3つ目は特に厄介です。会計システム、勤怠システム、インターネットバンキング、取引先のEDIなど、社外のサービス側で「この会社からの接続だけ許可する」という設定がされていると、回線が変わった瞬間に一斉につながらなくなります。次の章で棚卸しの方法を説明します。

移転前に棚卸ししておくIT側の「住所」リスト

引越しの住所変更というと、登記や税務署の届出が思い浮かびますが、IT側にも住所や接続元が登録されているものがたくさんあります。ここが最も抜けやすく、しかも移転後に困ります。2週間前までに一覧を作ってください。

棚卸しするもの 何が登録されているか 変えないとどうなるか
固定IPアドレスによるアクセス制限 会計・勤怠・銀行・EDI・グループウェアの許可IP 移転翌日にログインできなくなる
複合機のスキャン送信先 共有フォルダーのIPアドレス、メール送信の設定 スキャンしても届かない
社内サーバー・NASの固定IP 業務システムからの参照先 業務システムがファイルを開けない
UTM・ルーターの設定 拠点間VPNの接続先IPアドレス 拠点間の通信が切れる
クラウドサービスの請求先住所 請求書・領収書の宛先 経理処理で差し戻しが発生する
ドメイン・SSL証明書の登録情報 登録者住所、更新通知の宛先 更新通知が届かず、失効に気づけない
Googleビジネスプロフィール 地図上の所在地、営業時間 お客さまが旧住所へ来てしまう
Webサイト・採用サイトの会社概要 所在地、アクセス地図、電話番号 問い合わせが減る/届かない
メール署名・請求書・見積書の雛形 住所と電話番号 取引先に旧情報が出続ける
名刺・封筒・パンフレット 住所と電話番号(番号が変わる場合は特に) 刷り直しの時間が足りなくなる

一番上の「固定IPアドレスによるアクセス制限」は、移転の直前に慌てて調べても間に合いません。契約しているクラウドサービスの管理画面を1つずつ開き、IP制限が有効になっていないかを確認します。 
有効になっていたら、移転先の新しいIPアドレスが決まった時点で、両方を許可リストに入れておきます。並行期間があれば、この作業は安全に行えます。

IT以外の住所変更(届出)は、総務側と分担する

会社としての住所変更手続きは総務・経理の担当になりますが、期限が短いものがあるため、IT側の棚卸しと同じ表に並べて管理しておくと抜け漏れが防げます。主なものは次のとおりです。

届出 提出先 期限の目安
本店・支店移転登記申請書 法務局 移転日から2週間以内
適用事業所名称・所在地変更届 日本年金機構 移転日から5日以内
労働保険 名称・所在地変更届 労働基準監督署 移転日の翌日から10日以内
雇用保険 事業主事業所各種変更届 ハローワーク 移転日の翌日から10日以内
異動届出書/給与支払事務所等の移転届出書 税務署 移転日から1か月以内

期限は制度改正で変わることがありますので、最新の情報は各窓口または顧問の社会保険労務士・税理士にご確認ください。 
IT担当としては、これらの手続きに使う法人番号や登記情報が、契約中のクラウドサービスの請求先情報とずれないよう、変更のタイミングを合わせておくと後の経理処理が楽になります。

移転を機に見直すと効果が大きい5つ

移転はコストがかかるイベントですが、同時に「どのみち工事をする」という好機でもあります。次の5つは、別のタイミングでやると二重に費用がかかるものです。

見直すもの 移転時にやると得な理由 効果の目安
電話をクラウドPBXへ 主装置(ビジネスフォンの箱)を買い直さずに済む 設備投資が不要になり、次の移転でも工事が発生しない
ファイルサーバーをクラウドへ サーバーを運ぶ・置く・冷やす必要がなくなる ラックとサーバー室の要件が下がり、物件の選択肢が広がる
複合機の契約を見直す 移設費がかかるなら入れ替えても差が小さい カウンター料金の単価を見直す好機になる
Wi-Fiを設計しなおす 天井を開けている間ならAP用の配線が安い あとから天井裏に通すより大幅に安い
古いパソコンを入れ替える 運んでから壊れると二度手間。運ぶ前に台数を減らせる 引越し費用そのものが下がる

特に2つ目は判断が大きく変わるポイントです。ファイルサーバーを新オフィスへ持っていく前提だと、専用のサーバースペース・電源・空調が要件になり、物件の選択肢が狭まります。先にクラウドへ移してしまえば、その要件が消えます。 
移転先を探し始める前に決めておくと効果的です。

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新オフィスで図面確認

費用はどのくらいかかる?公開されている実額で見る

移転のIT費用は「一式いくら」で見積りが出てくることが多いのですが、公式に公開されている金額もあります。まず、判断の基準になる実額を押さえておきましょう。

NTT東日本が公開している移転工事費(加入電話)

申し込み方法 訪問なしの場合 訪問ありの場合(機器工事は含まず)
NTT東日本のホームページから 3,300円(基本工事費2,200円+交換機等工事費1,100円) 22,000円(基本8,250円+交換機等1,100円+屋内配線12,650円)
ホームページ以外から 4,400円(基本工事費3,300円+交換機等工事費1,100円) 23,100円

同じ工事でも、Webから申し込むほうが1,100円安くなります。回線の本数が多いと差が積み上がるので、まとめて申し込むときは申し込み経路も意識してください。

ひかり電話オフィスA(エース)の料金

移転に合わせてひかり電話へ切り替える場合、NTT東日本が公開している料金は次のとおりです(いずれも税込表示)。

項目 金額 備考
月額基本料 1,210円 1チャネル・1電話番号の利用料を含む
追加チャネル 1,100円/1チャネル 最大299チャネルまで追加可能
追加番号 110円/1番号 最大6,999番号まで追加可能
同番移行工事費 2,200円/1番号 いまの固定電話番号をそのまま使うための費用
基本工事費 8,250円(Web申込) 宅内工事費が31,900円以下の場合。Web以外は9,350円

見落としやすいのが「同番移行工事費 2,200円/1番号」です。ダイヤルインで10番号を使っている会社なら、それだけで22,000円になります。番号を何本残すかは、費用に直結する判断です。この機会に、使っていない番号を整理するのも一案です。

NTT東日本「ひかり電話オフィスA(エース)料金」 ➡

移転にかかるIT費用の全体像

30名規模のオフィス移転を想定した内訳の目安です。ビルの状況で大きく振れるため、あくまで初期の予算取り用としてご覧ください。

費目 目安 振れ幅が大きくなる条件
回線の移転・新設工事 3万〜30万円 ビルへの引込みから必要な場合は大きく増える
電話の移転・切り替え 3万〜30万円 番号数、チャネル数、主装置の有無
LAN配線工事 20万〜80万円 情報コンセントの口数、OAフロアの有無
ネットワーク機器 20万〜80万円 スイッチ、UTM、アクセスポイントの台数
ラック・電源・設置作業 5万〜30万円 サーバーを持ち込むかどうか
機器の移設・設定作業 10万〜40万円 複合機、サーバー、パソコンの台数

合計すると、30名規模で60万〜200万円程度が一つの目安です。このうち大きな割合を占めるのは配線工事と設置作業で、これは内装工事と同時に行えば2〜3割安くなります。逆に、移転してから追加でLANを引くと、同じ作業でも割高になります。

情シスがつまずきやすい落とし穴8つ

当社が移転のご相談を受けるなかで、繰り返し起きているものを挙げます。どれも、事前に1行決めておけば防げるものばかりです。

落とし穴 何が起きるか 先に決めておくこと
物件を契約してからIT担当に話が来る 光が引けない、電気が足りない、が後から判明 内見に情シスも同行する
回線の申し込みだけして工事日を押さえていない 移転日に開通が間に合わない 移転日が決まった時点で工事日を確保する
旧回線を移転日ちょうどで止める 半日ずれただけで全社が止まる 1〜2週間の並行期間を作る
電話番号が変わるかを直前まで確認していない 名刺・封筒・Webの作り直しが間に合わない 内見の段階でNTTに確認する
IP制限の棚卸しをしていない 翌日、複数のシステムに一斉にログインできない 2週間前までに許可IPの一覧を作る
機器の置き場所を決めていない 床置きになり、後日ネットワークが不安定になる ラックの位置と電源をレイアウト図に書く
当日の窓口を決めていない 全員が別々に問い合わせて現場が混乱する 当日と翌営業日の担当を名前で決める
旧オフィスの回線を解約し忘れる 使っていない回線の基本料を払い続ける 解約日をスケジュール表に入れておく

最後の「解約し忘れ」は笑い話のようですが、実際によくあります。移転が終わると全員が通常業務に戻るため、旧回線のことを誰も思い出しません。移転計画表の最終行に「旧回線の解約」を1行入れておくだけで防げます。

情シスが1人の会社は、移転だけ外に出す判断もある

ここまでの内容を読んで「これを通常業務と並行してやるのは無理だ」と感じた方は、その感覚が正しいです。移転のIT作業は、回線事業者、電話工事、LAN工事、内装会社、複合機のリース会社、引越し業者と、少なくとも6社との調整が同時に走ります。

情シスが1人、あるいは総務との兼任という会社では、移転の期間だけ社内の問い合わせ対応が止まります。実際のご相談でも、移転の1か月前から担当者が疲弊し、当日にミスが出るというパターンをよく見ます。

対策は2つです。ひとつは、社内の問い合わせを移転期間だけ止めると宣言し、緊急でないものは移転後にまわすと全社に伝えること。もうひとつは、業者間の調整そのものを外部の窓口に一本化してしまうことです。 
回線・電話・ネットワーク・複合機をまとめて相談できる相手が1社いれば、担当者が受ける電話の数は大きく減ります。

廃棄・返却とセキュリティで抜けやすいこと

移転では必ず「捨てるもの」が出ます。ここは情報漏えいの観点で最も危険な工程です。段ボールに詰めて業者に渡してしまう前に、次の4点を確認してください。

対象 抜けやすい点 対応
古いパソコン・NAS・サーバー 初期化しただけではデータを復元できる場合がある 消去の記録が残る方法で処分する
複合機・プリンター 本体の記憶装置に印刷・スキャンの履歴が残る リース返却の前にデータ消去を依頼する
書類・帳票 移転を機に大量に出るが、分別されないまま出される 溶解処理など、追跡できる方法を選ぶ
新オフィスの入退室 鍵の受け渡しだけ決めて、記録の仕組みがない 誰がいつ入ったかを残せる仕組みを検討する

特に複合機は見落とされます。中に記憶装置が入っていて、印刷やスキャンをした書類の内容が残っていることがあります。リース返却の前にデータ消去を依頼できるかどうか、契約内容を確認してください。詳しい手順は、当社グループのセキュリティ製品比較サイトで解説しています。 
役割としては、本記事が「移転のIT段取り全体」、以下が「その中の廃棄と物理セキュリティの実務」です。

パソコン・スマホの廃棄/リース返却時のデータ消去を見る ➡

複合機・プリンターのセキュリティ対策を見る ➡

オフィスの物理セキュリティ・入退室管理を見る ➡

移転にともなうIT費用に補助金は使える?

正直に申し上げると、引越しそのものや配線工事だけを目的として使える補助金は、ほとんどありません。ただし、移転を機にクラウドサービスを導入する部分は、対象になりうる場合があります。

制度 移転との関係 注意点
デジタル化・AI導入補助金 クラウドPBX、グループウェア、会計・勤怠などのソフトが対象になりうる 登録されたITツールに限られる。配線工事や機器の移設は対象外
中小企業省力化投資補助金 単価50万円以上の設備投資が1つ以上必要 クラウド導入だけでは要件を満たさない
各自治体の移転・立地支援 自治体によっては賃料や設備の補助がある 移転先の自治体ごとに要件も期間も異なる
業務改善助成金 設備投資と賃上げをセットで行う場合 賃上げが条件になるため、経営計画との整合が必要

実務的におすすめしているのは、移転工事は自己資金で進め、同時に導入するクラウド側で補助金を検討する二段構えです。補助金は交付決定の前に発注してしまうと対象外になるため、移転日程との兼ね合いを早い段階で確認する必要があります。 
要件は年度ごとに変わりますので、必ず最新の公募要領をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

オフィス移転のITについてよくある質問

Q. 移転のIT準備は、結局いつから始めればいいですか?

A. 物件を決める前からです。少なくとも移転の3か月前には回線と電話の申し込みを済ませたいので、逆算すると物件選定の段階でIT担当が関わっている必要があります。 
候補物件を3つ見に行くとき、そのすべてに同行して回線・電気・配線ルートを確認するのが理想的な始め方です。

Q. 番号ポータビリティがあるのに、なぜ移転で番号が変わるのですか?

A. 番号ポータビリティは電話会社を変えても番号が変わらない制度で、場所を変えるための制度ではないためです。電話番号の市内局番はNTTの収容局と結びついているため、移転先が別の収容局のエリアに入ると番号が変わります。 
同じ区内でも変わることがあり、住所だけでは判断できません。NTTに現住所と移転先住所を伝えて確認してください。

Q. 10名の会社でも、これだけの段取りが必要ですか?

A. 項目は同じですが、量が少ないだけです。10名でも回線の開通日は変えられませんし、電話番号が変わるかどうかも同じ理屈で決まります。むしろ人数が少ない会社ほど専任の担当がいないため、抜けが起きやすくなります。 
本記事の表を印刷して、担当者名と期限を書き込むだけでも十分に効果があります。

Q. 移転先が居抜き物件(前の会社の設備が残っている)です。そのまま使えますか?

A. 配線が残っていても、そのまま使えるとは限りません。前のテナントの回線契約は解約されているため、ケーブルはあっても信号は来ていない状態が普通です。 
また、残された情報コンセントがどこにつながっているのか分からないことも多く、結局は導通の確認作業が必要になります。「配線があるから工事は不要」と考えず、必ず現地で確認してください。

まとめ|オフィス移転のIT段取りで押さえる7点

押さえる点 要点
① 物件を決める前に見に行く 光の引込み・電気容量・配線ルートは、契約後には変えられない
② 回線は3か月前に申し込む 申し込みではなく「工事日」を押さえる。繁忙期はさらに延びる
③ 電話番号は収容局で決まる 番号ポータビリティは会社を変える制度で、場所を変える制度ではない
④ 並行期間を1〜2週間作る 旧回線を移転日ちょうどで止めない
⑤ IP制限の棚卸しを2週間前に 移転翌日に複数システムへ一斉にログインできなくなるのを防ぐ
⑥ 機器の置き場所を図面に書く 床置きは移転後の不安定さの原因になる
⑦ 旧回線の解約を最終行に入れる 終わったあとに誰も思い出さないため

オフィス移転は数年に一度しかない大仕事ですが、ITの部分だけを見れば、やることは決まっています。難しいのは技術ではなく、順番と期日です。回線と電話を先に動かし、内装と同じ表でスケジュールを管理する。これだけで、移転当日に業務が止まるリスクは大きく下がります。

株式会社アーデントでは、回線・電話(クラウドPBX)・ネットワーク・複合機・クラウドサービスまで、オフィス移転にともなうIT全体をまとめてご相談いただけます。 
移転先の候補が決まる前の段階でも、内見時のチェックポイントや電話番号が変わるかどうかの確認からお手伝いできます。お気軽にご相談ください。

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