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【2026年版】Wi-Fiの電波強度「dBm」の目安とオフィスでの調べ方|Windowsの「シグナル%」の正体と、弱いときに効く順番

Wi-Fiの電波強度をdBmで測るイメージ図

「Wi-Fiが遅い」と言われて画面の電波マークを見ても、アンテナが何本か分かるだけで、本当に弱いのか、それとも別の原因なのかは分かりません。
そこで出てくるのが dBm(ディービーエム)という数字です。

この記事では、Wi-Fiの電波強度を表す dBm の読み方と目安を、Microsoft・バッファロー・シスコが公開している数値をもとに整理します。
あわせて、オフィスで実際に測るときの手順と、測った数字から何をすればいいのかまでをまとめました。

先に結論(3つだけ)
1. Windowsが表示する「シグナル 85%」は、実はパーセントではなく dBmを言い換えただけの数字です。換算式は「dBm=%÷2−100」。
2. 目安は 5GHzで−60dBm以上なら良好、−70dBmが実用の下限。IP電話やWeb会議を使うなら−67dBmを切らないように設計します。
3. 電波が強いのに遅いときは、電波強度ではなく「ノイズ」と「チャネルの混雑」が原因です。この場合はアクセスポイントを増やしても直りません。
今日10分でできる確認
① Windowsキー+Rで「cmd」と入力し、netsh wlan show interfaces と打つ
② 「シグナル」の行の%を見る(例:70%)
③ %を2で割って100を引く(70÷2−100=−65dBm
この3つだけで、感覚ではなく数字で電波の強さを言えるようになります。

目次

その「シグナル 85%」は、実はパーセントではありません

Wi-Fiの電波強度を調べようとすると、多くの人がまずWindowsのコマンドにたどりつきます。そこに出てくるのが「シグナル : 85%」という表示です。
ところがこの%は、電池残量のような「満タンに対する割合」ではありません。

Windowsの「%」はdBmの言い換えにすぎない

マイクロソフトは、この数値の意味を開発者向けの公式ドキュメントではっきり定義しています。

A value of 0 implies an actual RSSI signal strength of -100 dbm.
A value of 100 implies an actual RSSI signal strength of -50 dbm.
You can calculate the RSSI signal strength value for wlanSignalQuality values between 1 and 99 using linear interpolation.
(0は実際の電波強度−100dBmを、100は−50dBmを意味します。1〜99の値は線形補間で計算できます)

つまり0%が−100dBm、100%が−50dBmで、その間はまっすぐ比例しているだけです。ここから、次の式が出てきます。

換算式はこれだけ
dBm = 表示された% ÷ 2 − 100
例:70% → 70÷2−100=−65dBm / 60% → −70dBm / 50% → −75dBm
Windowsの表示 dBmに直すと ざっくりの評価
100% −50dBm 非常に良い(これ以上は表示できない)
90% −55dBm 非常に良い
80% −60dBm 良好
70% −65dBm 良好とふつうの境目
66% −67dBm 通話の下限
60% −70dBm 実用の下限
50% −75dBm 遅さを感じる
40%以下 −80dBm以下 実用的でない(要改善)

「100%だから満点」ではない

この表で見落とされがちなのが、一番上の行です。Windowsの表示は−50dBmで100%に張り付くので、実際には−45dBmでも−30dBmでも、画面上はどちらも100%と出ます。
アクセスポイントのすぐ隣で測って100%になっても、それは「とても強い」以上の意味を持ちません。

逆に言えば、100%が出ない=異常ではありません。席で80%(−60dBm)出ていれば、Web会議を含めて業務にはまったく支障のない強さです。
「100%じゃないから電波が弱い」という思い込みで機器を買い替えてしまうケースは、実際のご相談でもよくあります。

実際に測る手順(Windows標準・追加ソフトなし)

手順 操作 見るところ
1 Windowsキー+Rを押して「cmd」と入力 黒い画面が開く
2 netsh wlan show interfaces と入力してEnter 接続情報が一覧で出る
3 「シグナル」(英語版はSignal)の行を探す %の数字
4 %÷2−100を計算する これがdBm
5 あわせて「受信速度」「送信速度」も控える 実際のリンク速度

「SSID」「チャネル」「認証」なども同じ画面に出るので、どのアクセスポイントに、どの周波数帯でつながっているのかまで一度に確認できます。
調査のときは、この画面をそのままスクリーンショットで残しておくと後で比較しやすくなります。

スマホ・タブレットではどう測る?

オフィスの電波調査でPCだけを見ていると見落とすのが、現場で使っている端末です。
倉庫の棚卸しタブレット、受付のiPad、内線化したスマートフォンは、PCとは電波の受け取り方が違うため、同じ場所でも数値が一致しません。

端末 dBmを見られるか 見る方法
Windows PC 見られる netshコマンド(%を換算)
Android 見られる 設定内のWi-Fi詳細、または計測アプリ
iPhone・iPad 標準では見られない アップルが標準機能として案内していない
Mac 標準では見られない 同上
iPhone・iPadしか置いていない場所はどう測るか
受付や倉庫のように、その場所で使う端末がiPadしかないケースはよくあります。
この場合はノートPCを持ち込んで、同じ位置・同じ高さで測るのが実務的です。
厳密な値は端末ごとに違いますが、「この場所は他と比べて弱い」という相対的な比較には十分使えます。
調査の目的は絶対値を当てることではなく、弱い場所を見つけることだと割り切ってください。

そもそも電波強度(RSSI)とは?なぜマイナスの数字なのか

dBmは「1ミリワットを基準にしたときの電力の大きさ」を表す単位です。
Wi-Fiの電波はもともと非常に小さいエネルギーなので、基準の1ミリワットより必ず小さくなり、結果として数字はマイナスになります。

マイナスの数字の読み方
0に近いほど強い(−50dBm > −70dBm > −90dBm)
気温のマイナスと同じで、−50℃より−90℃のほうが低い、と考えると分かりやすくなります。
3dB下がると電力は約半分、10dB下がると約10分の1になります。−60dBmと−70dBmでは、10倍の差があります。

画面の電波マーク(アンテナの本数)は、このdBmを機種ごとの基準でざっくり3〜4段階に丸めたものです。
何本で何dBmかはメーカーや機種によってバラバラなので、別の端末どうしでアンテナ本数を比べても意味がありません。数字で比べる必要があるのは、このためです。

電波が弱い状態から改善した状態への比較図

電波が弱くなる原因は、大きく4つ

数字の読み方が分かったところで、電波が落ちる原因を4つに整理しておきます。打ち手を決めるときに、この4つのどれに当たるかで選択肢が変わります。

原因 起きること オフィスでよくある例
距離 離れるほど弱くなる アクセスポイントが片側の壁だけにある
障害物 壁・金属・水に吸収される コンクリート壁、書庫、金属ラック、冷蔵庫
干渉源 同じ帯域の雑音が増える 電子レンジ、Bluetooth機器、近隣テナントのWi-Fi
設置場所 電波が遮られて広がらない 棚の中、床置き、段ボールの陰、机の下
見落とされやすい障害物
金属と水は、電波を特に強く遮ります。
書類がぎっしり入ったスチール書庫、金属製のパーテーション、業務用冷蔵庫、水槽などは、
その裏側だけ極端に弱くなる原因になります。
「この席だけ調子が悪い」という相談では、席の後ろに何が置かれているかを必ず確認してください。

特に2.4GHz帯は電子レンジと同じ周波数を使うため、給湯室の近くでは昼食の時間帯だけ通信が不安定になることがあります。「12時台だけ遅い」という症状が出たら、まずこれを疑ってください。

dBmはいくつなら大丈夫?周波数帯で目安が違う

ここがこの記事の本題です。ネット上には「−70dBm以上なら大丈夫」といった説明が多いのですが、実際の目安は2.4GHzと5GHzで違います
バッファローが公開している目安は次のとおりです。

評価 2.4GHz帯 5GHz帯
良好な通信速度が期待できる −65dBm以上 −60dBm以上
実用的な通信速度が期待できる −75〜−66dBm −70〜−61dBm

5GHzのほうが厳しい数字になっているのは、5GHzは障害物に弱く、同じdBmでも距離が離れると急に落ちやすいためです。
「5GHzに変えたのに前より悪くなった」という相談の多くは、この特性が原因です。

IP電話・Web会議を使うなら「−67dBm」が下限

音声を扱う場合は、データ通信よりも厳しい基準が必要になります。シスコ(Meraki)は、無線で音声を使うネットワークの設計要件をこう明記しています。

Verify an AP can be seen from the phone at -67 dBm or better in all areas to be covered.
(カバーするすべてのエリアで、電話機からアクセスポイントが−67dBm以上で見えることを確認する)
Signal to Noise Ratio should always 25 dB or more in all areas to provide coverage for Voice applications.
(音声を使うエリアでは、SN比を常に25dB以上に保つ)

データ通信なら−70dBmでも動きますが、音声は途切れるとすぐ会話が成立しなくなります。
スマホを内線化していたり、Web会議を日常的に使うオフィスでは、「−67dBmを下回る席を作らない」を設計の基準にすると失敗しにくくなります。

用途別の早見表

dBm Windowsの表示 この強さでできること 判断
−50〜−55dBm 100〜90% すべて快適。アクセスポイントのすぐ近く 問題なし
−60dBm 80% Web会議・大きいファイルのやり取りも快適 目標にしたいライン
−65dBm 70% メール・Web・チャットは快適。会議も概ね可 許容範囲
−67dBm 66% 音声通話が成立する下限 電話を使うならここが底
−70dBm 60% つながるが、混雑時に遅さを感じる 改善を検討
−75dBm 50% 切れやすい。ファイル操作が止まる 要改善
−80dBm以下 40%以下 実用的でない アクセスポイント追加が必要
そのまま社内ルールにできる3行
席で測って−65dBmより良ければ、電波強度は原因ではない(別の原因を探す)
−70dBmを下回る席があれば、そこは改善対象
電話・Web会議をする部屋は−67dBmを切らない

電波は強いのに遅い?RSSIだけでは判断できません

実務でいちばん多いのが、「測ったら−55dBmもあるのに遅い」というケースです。これは電波強度の問題ではありません。バッファローも、RSSIの目安を示したうえで次の注意書きを添えています。

RSSIの値はノイズ(干渉波)は考慮されていないため(測定値が良好でも十分な速度が出ない場合がある)

大事なのは「電波の強さ」ではなく「まわりの雑音との差」

Wi-Fiの通信品質を決めるのは、電波の絶対的な強さではなく、電波が雑音(ノイズフロア)よりどれだけ大きいかです。これをSN比(SNR)と呼びます。

SN比の計算はひき算だけ
SN比(dB)= 電波強度(dBm)− ノイズフロア(dBm)
例:電波が−65dBm、ノイズフロアが−90dBm → SN比は25dB(良好)
例:電波が−75dBm、ノイズフロアが−90dBm → SN比は15dB(不足)

シスコは推奨値を、データ通信ならSN比20dB以上、音声を使うなら25dB以上としています。
ここで効いてくるのが、同じ−65dBmでも場所によって評価が変わるという点です。
静かな場所(ノイズフロア−90dBm)なら良好ですが、雑音の多い場所(ノイズフロア−80dBm)ではSN比15dBになり、品質は落ちます。

このため、電波強度だけを見て「強いから問題ない」と判断すると、原因にたどりつけないまま機器の買い替えを繰り返すことになります。

もうひとつの犯人は「チャネルの混雑」

電波が強く、雑音も少ないのに遅い場合は、チャネル利用率を疑います。同じチャネルを多くの機器が奪い合っていると、電波の強さに関係なく順番待ちが発生します。
シスコは、音声を扱うネットワークではチャネル利用率を50%未満に保つことを推奨しています。

症状 疑うところ 確認方法 効く打ち手
席から遠いと弱い 電波強度(RSSI) netshで%を測る アクセスポイントの追加・移設
強いのに遅い ノイズ・SN比 アクセスポイント管理画面のノイズ値 2.4GHzをやめて5GHzに寄せる
昼だけ遅い チャネル利用率 管理画面の利用率グラフ チャネル変更・AP増設で分散
特定の部屋だけ切れる 障害物・距離 フロア図で測定点を比較 AP追加・設置場所の見直し
全員が同時に遅い 回線側(Wi-Fiではない) 有線PCで速度測定 回線の見直し
最初に切り分けるコツ
有線LANでつないだPCで測って速ければ、原因はWi-Fi側です。
逆に有線でも遅ければ、電波をいくら調べても解決しません。回線やルーター側を見ます。
この1手順を飛ばすと、Wi-Fiの調査に何日もかけたあとで「回線が原因でした」となります。

まわりの電波を「見える化」して干渉を調べる方法

チャネルの混雑や近隣テナントとの干渉は、専用ソフトがないと調べられないと思われがちですが、これもWindows標準のコマンドで一覧にできます
自社のアクセスポイントだけでなく、周囲で飛んでいる電波もまとめて確認できます。

手順 操作 分かること
1 コマンドプロンプトを開く
2 netsh wlan show networks mode=bssid と入力 周囲のSSID一覧が出る
3 各SSIDの「チャネル」を書き出す どのチャネルが混んでいるか
4 自社のSSIDのチャネルと見比べる 近隣と重なっていないか
5 「シグナル」も見る 近隣の電波がどれだけ強く届いているか
2.4GHz帯は「1・6・11」しか使えないと考える
2.4GHz帯は、総務省の技術基準では13チャネルありますが、
電波が重ならない組み合わせは1・6・11の3つだけです。
隣のチャネル(たとえば3や8)を選んでも、電波は隣同士で食い合います。
自社のアクセスポイントを複数置くときは、必ず1・6・11から選んで割り振ってください。
近隣テナントが1と6を使っているなら、自社は11に寄せる、という判断ができます。

5GHz帯は重ならないチャネルが十数個あるため、この取り合いはほとんど起きません。
2.4GHzで干渉が避けられない環境では、業務用の端末を5GHzに寄せてしまうのがいちばん確実な対策になります。

それでも専用ツールが要る場面
コマンドで分かるのは「Wi-Fiの電波」だけです。
電子レンジ、無線式のバーコードリーダー、防犯機器など、Wi-Fi以外が出す雑音は映りません
「Wi-Fiの電波は空いているのに遅い」という場合は、この見えない雑音が疑わしいため、
スペクトラムアナライザを使った業者の調査(5〜20万円程度)が有効です。

オフィスの電波調査(サイトサーベイ)はどう進める?

業者に電波調査を依頼すると数万円から数十万円かかりますが、「どこが弱いか」を把握するだけなら、自社で半日あればできます。専用の測定器は必要ありません。
ノートPC1台とフロア図があれば十分です。

フロア図に測定ポイントを配置した電波調査のイメージ

半日でできる簡易調査の手順

STEP やること 所要時間
1 フロア図を印刷し、測定する点に番号を振る(席・会議室・休憩室・倉庫) 15分
2 ノートPC1台を持って各点へ移動し、netshで%を記録する 1〜2時間
3 %をdBmに直して、フロア図に書き込む 30分
4 −70dBmを下回った点に赤丸を付ける 10分
5 赤丸が固まっている場所を、アクセスポイント追加の候補にする 20分
測定を正しく行う4つのコツ
① 必ず同じ端末で測る:バッファローも「端末の出力能力によって値が変わる」と注意しています。PCを変えると数字が変わり、比較になりません。
② 同じ高さで測る:机の上(約70cm)に置いて測ります。床や手に持った状態では数値がぶれます。
③ 混雑している時間帯に測る:全員が在席している平日の午前中が理想です。誰もいない休日に測ると、実際の環境と変わってしまいます。
④ 各点で10秒ほど待ってから記録する:移動直後は数値が安定しません。

測定点の決め方

全部の席を測る必要はありません。
①各島の端の席 ②会議室の一番奥 ③アクセスポイントから最も遠い場所 ④壁や柱を挟んだ場所の4種類を押さえれば、弱い場所はほぼ見つかります。

あわせて、倉庫・書庫・給湯室・受付など「人は少ないが業務で使う場所」も忘れずに入れてください。
実際のご相談では、倉庫で棚卸しのタブレットが切れる、受付でiPadの来客システムが反応しない、といった形で表面化することが多い場所です。

記録は必ず残す

この調査でいちばん価値があるのは、改善の前後を数字で比べられるようになることです。「なんとなく良くなった気がする」では、追加投資の判断ができません。
フロア図に書き込んだ測定結果はそのまま保管し、アクセスポイントを追加したあとで同じ点をもう一度測ります。

この記録は見積りにもそのまま使えます
測定済みのフロア図があると、業者に「この赤丸の場所を−65dBm以上にしてください」と条件で依頼できます。
条件を数字で示せると、各社が同じ前提で見積もるので比較ができます。
逆に「なんとなく遅いので見てほしい」だと、提案内容も金額もバラバラになり、比べられません。

測った数字から、何をすればいい?

調査が終わったら、赤丸の場所に対して打ち手を決めます。費用が安く効果が出やすい順に並べると、次のようになります。

優先 打ち手 費用の目安 効く場面
1 アクセスポイントを再起動する 0円 昨日まで問題なかったのに急に遅い
2 ファームウェアを最新に更新する 0円 特定の端末だけ切れる・不安定
3 アクセスポイントの置き場所を変える(棚の中・床から出す) 0円 1か所だけ極端に弱い
4 5GHzを優先させる設定に変える 0円 強いのに遅い
5 チャネルを自動から固定に変える 0円 昼だけ遅い
6 アクセスポイントを1台追加する 3〜8万円/台 特定エリアが広く弱い
7 法人向けアクセスポイントへ入れ替える 5〜15万円/台 家庭用で20台以上つないでいる
8 有線LANを増設して天井にAPを設置 20〜60万円 フロア全体が弱い
1と2を先にやる理由
再起動とファームウェア更新は費用がゼロで、5分で終わります。
それでも直らないことを確認してから次に進むと、「実は再起動で直った」に後から気づくという無駄がなくなります。
⚠️ ファームウェア更新は通信が一時的に止まるため、必ず業務時間外に行ってください。
更新は電波の改善だけでなく、セキュリティ上の脆弱性をふさぐ意味でも重要です。放置している機器がないか、この機会に棚卸ししておくことをおすすめします。

社内のネットワーク機器(ルーター・スイッチ・無線AP)のセキュリティ対策を見る ➡

「中継機を足す」は最後の手段

電波が届かない場所があると、まず中継機を思いつきますが、中継機は受けた電波を同じ無線で送り直すため、理論上そこから先の速度が半分以下になります
電波マークは強くなるのに速度は上がらない、という状態になりやすい機器です。

オフィスでは、可能な限り有線LANを引いてアクセスポイントを増やすほうが確実です。
天井裏や床下に1本ケーブルを通す工事は、移転や内装工事と同時なら大きな追加費用になりません。

アクセスポイントを増やしすぎても遅くなる

弱い場所があるからといって台数を増やせばよい、というものでもありません。
特に2.4GHz帯は、総務省の技術基準で電波が重ならないチャネルが3つしかありません
4台以上を同じフロアに置くと、必ずどれかが電波を奪い合うことになります。

台数を増やすときは、あわせて1台あたりの電波出力を下げるのが定石です。
出力を下げると1台のカバー範囲が狭くなり、隣のアクセスポイントとぶつかりにくくなります。この調整は法人向けの機種であれば管理画面から設定できます。

オフィスでノートPCとフロア図を使ってWi-Fiの電波を調査する様子

情シスがつまずきやすい落とし穴

落とし穴 なぜ起きるか どうする
1台のPCの数字だけで判断する 端末によって測定値が変わる 調査は必ず同じ1台で通す
誰もいない時間に測る 混雑の影響が出ない 平日の在席時間に測る
アンテナ本数で比べる 機種ごとに基準が違う dBmの数字で比べる
弱い=APを増やす、と決めつける 原因がノイズや回線のことがある 先に有線で速度を測る
中継機で解決しようとする 速度が半分以下になる 有線を引いてAPを増やす
APを増やしただけで出力調整をしない 電波どうしがぶつかる 出力を下げて範囲を分ける
改善前の記録を残していない 効果を説明できない フロア図に測定値を残す
APが棚の中・段ボールの陰にある 電波が遮られる 見える場所・高い位置へ
実際にあったご相談
「Wi-Fiが遅い」と相談を受けて測定に伺ったところ、席では−58dBmと十分な強さが出ていました。
調べると、フロアの全員が2.4GHzにつながっており、チャネルが近隣テナントと重なっていたことが原因でした。
5GHzを優先する設定に変えただけで改善し、機器の買い替えは不要でした
電波強度を測っていなければ、そのままアクセスポイントを買い足していたケースです。

費用はどれくらいかかる?

項目 費用の目安 備考
自社での電波調査 0円 ノートPCとフロア図だけで可能
設定変更(5GHz優先・チャネル固定) 0円 管理画面から実施
法人向けアクセスポイント 3〜15万円/台 管理機能つきかどうかで差が出る
PoE対応スイッチ 3〜10万円 APへ電源をLANケーブルで供給
LAN配線工事 2〜6万円/箇所 天井裏・床下の経路で変動
業者による電波調査 5〜20万円 報告書つき。大規模フロア向け

30名程度のオフィスで、アクセスポイント2台の追加と配線を行う場合、おおむね20万〜60万円が目安です。
ただし、この記事の手順で調査してみると、設定変更(0円)と設置場所の見直し(0円)だけで解決するケースも少なくありません。

順番を間違えないこと
①測る(0円)→ ②設定を変える(0円)→ ③置き場所を変える(0円)→ ④それでも足りない場所だけ機器を足す
この順番を守るだけで、必要のない買い替えを避けられます。
いきなり④から入ると、原因が違った場合に費用だけが増えます。

補助金は使える?

結論から言うと、無線LANの工事や機器そのものに使える補助金は多くありません
ただし、ネットワーク整備と同時にクラウドサービスを導入する場合は、その部分が対象になることがあります。

制度 無線LAN工事・AP 考え方
デジタル化・AI導入補助金 原則対象外 登録されたITツール(ソフト・クラウド)が中心
中小企業省力化投資補助金(一般型) 要件を満たしにくい 単価50万円以上の設備投資が必須
自治体の補助金 制度による テレワーク環境整備で対象になる例がある
共通の注意 交付決定前に発注すると対象外になる

現実的な進め方は、電波の調査と設定変更は自社で0円で行い、浮いた予算と補助金はクラウド側の導入に回すという二段構えです。
要件は年度ごとに変わるため、申請を検討する場合は必ず最新の公募要領をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

今日からできる3ステップ

STEP やること 所要時間 費用
1 自席で netsh を打ち、%をdBmに直す 5分 0円
2 フロア図に測定点を10か所ほど決めて測る 1〜2時間 0円
3 −70dBmを下回った場所を赤丸にして一覧にする 30分 0円

STEP3まで終われば、「どこが・どれくらい弱いのか」を数字で説明できるようになります。ここまでの成果物は、そのまま業者への相談資料や相見積りの依頼書として使えます。
逆にSTEP1〜3を飛ばして相談すると、各社が別々の前提で提案してくるため、比較ができなくなります。

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よくある質問

Q. アンテナの本数(電波マーク)では判断できないのですか?

A. 目安にはなりますが、比較には使えません。アンテナ何本で何dBmかは機種ごとに決められており、共通の基準がないためです。
同じ場所でもPCとスマホで本数が違うのはこのためで、「どちらが正しいか」ではなくどちらも正しい、という状態です。数字で比べたいときはdBmを使ってください。

Q. 「−70dBm」なら社内のどこでも大丈夫ですか?

A. 用途によります。メールやWeb閲覧が中心なら−70dBmでも実用的ですが、IP電話やWeb会議を使うエリアでは−67dBmが下限とされています。
またノイズが多い場所では、同じ−70dBmでも品質が落ちます。電話を使う部屋だけ基準を厳しくする、という分け方が現実的です。

Q. 電波は強いのに遅いのはなぜですか?

A. 電波強度とは別に、雑音との差(SN比)とチャネルの混雑が影響しているためです。バッファローもRSSIの値はノイズを考慮していないと明記しています。
この場合はアクセスポイントを増やしても改善しません。まず有線LANで速度を測り、Wi-Fi側の問題かどうかを切り分けてください。

Q. 測定は専門業者に頼まないとできませんか?

A. 弱い場所を洗い出すだけなら自社でできます。Windows標準のコマンドで数値が取れるため、ノートPCとフロア図があれば追加費用はかかりません。
工場など電波が複雑に反射する環境では業者調査(5〜20万円程度)が有効ですが、その場合も自社のデータがあると依頼が具体的になります。

まとめ:まず自席の1か所を測ってみる

ポイント 内容
Windowsの% dBmの言い換え。dBm=%÷2−100
100%の意味 満点ではなく「−50dBm以上」
良好の目安 5GHzで−60dBm以上、2.4GHzで−65dBm以上
実用の下限 −70dBm(通話を使うなら−67dBm)
強いのに遅い ノイズ・チャネル混雑を疑う
調査のコツ 同じ端末・同じ高さ・混雑時間帯
打ち手の順番 置き場所→設定→AP追加→配線工事
費用 調査と設定変更は0円でできる

Wi-Fiの不調は、原因が電波なのか、ノイズなのか、回線なのかで打ち手がまったく変わります。そして、その切り分けの入口が電波強度の数字です。
まずは自席でコマンドを1つ打ち、%をdBmに直すところから始めてみてください。

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