電子帳簿保存法改正のポイントをわかりやすくまとめました
電子帳簿保存法改正は、2024年1月から本格的に実施されます。もともとは2022年1月から施行される予定でしたが、2021年12月10日の『令和4年度税制改正大綱』で2年間の猶予期間が設けられることになりました。
本格開始はまだ先とはいえ、猶予期間の間でも準備等をできる限り進めておく必要があります。
本記事では、今回の電子帳簿保存法改正のポイントについて分かりやすく解説していきます。
そもそも電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類(帳簿、決算書、請求書など)を、決められた条件を満たせば電子化して保存することを認める法律です。
電子帳簿保存法の主な目的は下記のようなものがあります。
・経理業務の紙、ハンコ文化からの脱却
・事務用品(紙、ファイル等)のコスト削減
・経理のデジタルトランスフォーメーションの実現
・キャビネットや倉庫代などの保管コストの削減
・税務調査や監査の準備、対応時間の削減
・電子化することによって資料検索の時間軽減
・内部のセキュリティ強化
・働き方改革への対応
このように様々な効果が期待できますが、「経理業務の電子化・ペーパーレス化」が一番の目的です。
また電子帳簿保存法では、不正リスク(データの改ざん、数字のごまかし等)がないように「真実性の確保」「可視性の確保」が重視されている点も特徴です。
●「真実性の確保」→記録内容が本物であるか確認するために、たとえば受領後にタイムスタンプを付与したり、訂正・削除履歴が確認できるシステムを使用する方法が求められます。
●「可視性の確保」→誰もが確認できる状態という意味で、データの検索機能を確保しておき目的のデータを探しやすくしておく、システムの概要書を備え付けておく、パソコンやプリンタなどの操作マニュアルを保存場所に整備しておくことが必須となります。
電子帳簿保存法の制度の内容、罰則などの詳細については下記の記事で詳しく解説しています。
電子帳簿保存法改正のポイントまとめ
今回の電子帳簿保存法改正の主なポイントについて順に解説していきます。
①税務署への事前申請、承認が不要に!
これまでであれば電子帳簿等保存や書面のスキャナ保存を行うためには、運用の三か月前に税務署長へ承認申請書の提出が必須でした。
今回の改正でこの事前承認制度が廃止されるため、スキャナや保存システム等を導入したら即座に電子保存が可能となります。
また税務署の承認が出るまでは時間がかかるケースが多いため、この申請・承認のフローがなくなったことでスピーディーに電子データの保存を行うことができるメリットがあります。
②検索機能要件の緩和
検索機能についても要件が緩和されました。
書類によって検索の項目が異なる状態でしたが、改正後は「取引年月日」「取引先」「取引先の金額」の3項目が必須項目となります。
税務署からのダウンロード要請にすぐに応じる準備をしておけば、検索時に範囲指定や複数項目を組み合わせる手間がかかる機能は不要となります。
③タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプとはデータの改ざんなどの不正防止のためのものです。(もともと電子データの時刻を証明するために利用されてきました)
今回の改正によってタイムスタンプが緩和されたポイントは3つあります。
・付与期間が最長で2か月→2ヶ月と7営業日以内へ延長
・スキャニング時の自署は不要
・訂正・削除の履歴が確認できるクラウドサービスを利用する場合、タイムスタンプは不要になる
④罰則の強化
今回の改正に伴い罰則も強化されました。
一つ目は、青色申告の承認取り消しです。
青色申告とは、最大で65万円の特別控除などを受けられる税金面でのメリットが大きい制度です。
違反が発覚した場合、この青色申告が取り消しとなる可能性があります。青色申告が取り消しになってしまうと特別控除の適用が受けられないほかに、欠損金の繰り越しができなくなる、会社としての信頼が低下してしまうというリスクがあります。
2つ目は、追徴課税・推進課税が課される点です。
仮に不正申告やデータの隠蔽が発覚した場合には、通常の重加算税にさらに申告漏れに対する税額の10%という厳しい措置が適用されます。
※重加算税とは、意図的な隠ぺい行為や虚偽報告が行われた場合に、基礎となる税額に対して課せられる附帯税のことです。過少申告、不納付の場合は35%、無申告の場合は40%の税率が定められていますが、電子保存された事項で不正行為が発覚した場合は、上記の通常の重加算税からさらに+10%加重される形です。
また青色申告の承認が取り消されると白色申告での申請が必須となりますが、白色申告の場合は推進課税が課されます。
推進課税とは、税務署が推定して企業の所得税、法人税の額を決めて課税を行うことです。仮に税務署に他の税法に関する違反をしているとみなされてしまった場合、さらに税金が加重される可能性が上がるため会社にとっては大きな出費となってしまいます。
まとめ
今回は、電子帳簿保存法改正のポイントについて詳しく解説しました。
主なポイントは、
①税務署への事前申請・承認が不要になる
②検索機能要件の緩和
③タイムスタンプ要件の緩和
④罰則の強化
上記の4つです。本格的な開始はまだ先とはいえ、猶予期間の間でも電子帳簿保存法改正の内容をしっかりと理解しておき、できる範囲で準備を進めておきましょう。
電子帳簿保存法改正の理解をさらに深めるために、下記の記事もぜひ参考にしてください。
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